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【荒川区三河島】荒川くらし探訪|待望の営業再開!大正から続く銭湯「帝国湯」

「荒川区」というと、昔ながらの下町情緒溢れるお店や街並みのイメージが大きいのではないでしょうか。実を言うと荒川区は今、時代にフィットしたまちづくりや、暮らしを豊かにしてくれるお店やスポットがたくさんある注目のエリアなんです。
ひっそりとした住宅街に突如現れるオシャレなお店。広々とした魅力溢れる公園、リノベーションで新しく息を吹き込まれたような素敵なスポットなど、モノづくりの街・荒川区を支える「暮らしに寄りそうスポット」を探訪してご紹介していくコーナー、それが「荒川くらし探訪」です。

100年以上も愛され続ける!地域の社交場

JR常磐線三河島駅を降りると、まずはじめに目に飛び込んでくるのが5つの銭湯を紹介した看板に「三河島でひとっぷろ」の文字。東京23区内で大田区に続き2番目に銭湯が多いと言われる荒川区ですが、中でも駅周辺に5つもの銭湯が集まる三河島は都内随一の銭湯密集地帯です。2023年には生田斗真さんの主演映画『湯道』が公開され、銭湯における地域の社交場としての存在意義にも注目が集まりました。今回は、ここ三河島で廃業の危機を乗り越え、見事な復活劇を遂げた「帝国湯」の魅力をご紹介します。


脱衣所には、帝国湯の再開を願って書かれた地元住民からの手紙が飾られている。

駅から7分ほど住宅街の中を歩くと、姿を現すのがもくもくと煙をあげる帝国湯の煙突。1916(大正5)年に創業し、戦争での半焼を経て1952(昭和27)年に現在の建物が建てられました。戦後まだ一般家庭にお風呂が少なかった時代から、地域の人々の疲れを癒す場所であった帝国湯。2022年には先代女将の急逝により1年間の休業を余儀なくされましたが、地域の人々の強い願いに応える形で2023年に再開。経営を引き継いだのは、6代目にあたる甚五与司直(じんごよしなお)さんです。湯守である番頭を務めるのは5代目の娘にあたる石田綾子さん。営業再開後は、荒川区から老舗事業所功労表彰を受賞し、現在では毎週のようにメディア取材が訪れています。

圧巻!見事な破風が帝国湯のシンボル

左右を白い漆喰の塀で囲まれた古い木造建築の帝国湯。暖簾には旧字体の万葉仮名で「手似古久(ていこく)」の字があしらわれています。入母屋(いりもや)造りに起り(むくり)破風の壮大な門構え。先代や職人たちのこだわりが伝わってくるような、格調高き建物です。

下駄箱の並ぶ入口から男女別に分けられた暖簾をくぐると、頭上に広がるのは寺社やお城などに使われる木造の「折上格天井(おりあげごうてんじょう)」。格式の高い伝統的な天井様式で、どこか神聖な場所に足を踏み入れたような感覚に包まれます。

男湯脱衣所の天井一部には、高級旅館などにも使用される網代(あじろ)天井。薄い木や竹などを編み込んだもので、湯上りの火照った身体を冷ましてくれるような涼し気な雰囲気が漂います。ロッカー上に並ぶのは、常連さんたちの「置きシャンプー」。脱衣所で将棋を指す人たちの姿も、帝国湯ではお馴染みの光景です。

昭和レトロな空間で、ノスタルジックなひとときを


人気アイドルグループ「嵐」のメンバー5人が揃って出演した『黄色い涙』では、
このペンキ絵をバックに撮影が行われた。

浴場の壁一面に描かれているのは、見事なまでの三保の松原。ちょうど真ん中に男湯と女湯を分ける仕切りが設けられていますが、どちら側にいても壮大な富士山の全景を眺めることができるようになっています。この絵を描いたのは、銭湯背景画絵師である故・早川利光氏。豪快な波しぶきなどの描き方が特徴です。仕切りに施されたモザイクタイルにも注目。異なるテイストの絵が見事に調和した、不思議な空間となっています。古い木枠にはめられた障子ガラスは、おそらくひとたび割れてしまえば同じものを手に入れることはできません。年季の入ったヘルスメーターや古い本の数々など。懐かしいアイテムのひとつひとつに、タイムスリップしたような感覚を覚えます。


室内灯を反射しキラキラと輝く洗い場の床。
訪れるお客さんを迎え入れるために入念に清掃されているのがよく分かる。

壮大なペンキ絵に目を凝らすと女湯には通称「にんじんロケット」の絵、
男湯にはかわいらしいヘリコプターの絵が描かれている。
子供たちが指をさして喜ぶ姿が目に浮かぶ、遊び心に溢れたポイントだ。

お風呂の天井部分はまるで額縁のよう。
ここには当初「帝国湯」の名を誇示するように日章旗の絵が掲げられていたというが、
現在その姿を見ることはできない。

昔ながらの木造りの番台。
ここに立つ者はお金の受け取りだけでなく、
盗難やお客さんの体調などにも目を配るという重要な役割を担っている。

古いながらも清潔に保たれた脱衣所では、
背の低いロッカー越しにお客さん同士の会話も弾む。
女湯にはおむつ替え台や子供用のお風呂マット、
着替えを待つ間の子供向けの本などが用意されている。

地元工務店から贈られた大時計。
その下には江戸時代以降、地元の三河島三峯講が火難盗難除けに勧請した
三峯(みつみね)神社 の御札が貼られている。
両サイドに掲げられた昭和27年の入浴者心得にも注目だ。

昔ながらの釜ドライヤ―。
祖母がよく連れて行ってくれた銭湯で、
背が届かず正座をして使用していた筆者の幼き頃の記憶がよみがえる。

昔ながらの銭湯ではお馴染みのケロリン桶。
近年ではこれにサワーを入れて提供する居酒屋がSNS映えするなどとして注目を集めたが、
販売元が「食器としての安全性が担保できない」などと注意を呼びかけたことも記憶に新しい。

入口と脱衣所に使用されていた、深い翡翠色のマーブル柄タイル。
当時の流行りだったのだろうか、今では却って新しい印象を受ける。

とにかく熱い!帝国湯自慢のお湯を堪能せよ

男湯女湯共に浴場に用意されているのは、それぞれ用途の異なる3つの浴槽。温度が低めの薬湯に、中央の超音波浴泉(バイブラバス)、そして奥の熱湯(あつゆ)には帝国湯の代名詞であるアツアツのお湯が勢いよく注がれています。岩風呂を彷彿とさせる湯口も後ろのペンキ絵の世界観と見事に調和。振動数毎秒1万サイクル~3万サイクルもの超音波を発するバイブラバスは、温熱作用と殺菌作用を持ち合わせているため湯冷めしにくく、美肌効果も期待できます。全ての浴槽に使われているのは、電気を利用して引き上げた良質な地下水。この水を薪で沸かすことにより、まろやかで肌当たりの良いお湯が作り出されます。男湯女湯それぞれに飲料用の蛇口が設けられているのも注目ポイント。湯上りにぜひ味わってみてくださいね。


女湯は洗い場の端に、男湯は脱衣所の外に飲料水の蛇口が設けられている。

帝国湯のお湯はとにかく熱いことで有名。これこそが江戸っ子の銭湯だ!という気概が伝わってきます。最初は熱すぎて入れないという人も、慣れてくると他所の湯では物足りなくなってしまうのだとか。その温度は45度から50度近くともいわれていますが、明確に決まっている数字は特にないそうです。番頭の匙加減で決まるお風呂の温度。その日の気温やお客さんの入り具合によっても変化するため、一日に何度もお湯の加減をチェックしては調整するということが繰り返されています。常連さんの中には、水の流れで水温が下がるポイントを御存じの方もいるのだそう。肩まで浸かることができるようになるまでは、蛇口からお水を少し足してもOK。それ以上水を出し続けることは、マナー違反です。

3分浸かっては3分上がるということを3回繰り返す「333入浴法」が巷では注目されていますが、常連さんでも3分間まともに浸かることができる人はいないのでは?と語る番頭さん。番頭さん自身、(お忙しいことからも)ゆっくりと浸かる習慣はないのだそうですよ。


鯉のタイルは石川県金沢市の久谷焼製造会社「鈴栄堂」によるもの。
お湯にゆらゆらと映し出される鯉の姿を眺めるのも楽しみ方のひとつだ。

一番小さい浴槽の「薬湯」だけは、誰でも入れるようにと温度が低め。はじめにこちらのお風呂で身体を慣らすのも、熱湯に入る前のコツだそうです。浴槽の中には、布袋に入った「実母散」が。シャクヤクやショウブ根などを配合したもので、その昔難産の妊婦を救ったことから命名されたという謂れの妙薬です。更年期や月経痛など女性特有の症状だけでなく、神経痛や腰痛などにも効能アリ!一番小さい浴槽となるため、混雑時には譲り合ってご利用くださいね。

風情あるお庭で、至福の湯上りタイム


この池には30歳以上の黒いフナが存在するという噂。
この時は見つけることができなかった。

帝国湯の魅力のひとつが、男湯女湯共に手入れのされた美しい庭が設けられていること。脱衣所の引き戸をひいて外に出れば、心地よい水音に包まれた和やかな空間が広がります。石灯籠や青々と生い茂る草木、タイル絵から抜け出してきたかのような色鮮やかな鯉を眺めながら湯上りのひとときを。毎年5月には庭のツツジが見ごろを迎えます。お手洗いは洋式に作り変えられていますが、男湯に関しては外の縁側を通って行くという昔ながらの造り。新鮮な空気を浴びれば身体の火照りも冷め、また湯舟が恋しくなること請け合いです。


煙草が吸える場所が少なくなった昨今では、
灰皿の備わるこのような場所も貴重な存在だ。

不定期で行われる女性限定のアロママッサージもお楽しみのひとつ。縁側にベッドが置かれ、至福のひとときが味わえます。施術を行うのは、もともとお客さんとして帝国湯に通っていたという「タビネコ堂」さん。アロマ販売が夢だというお客さんとの会話から生まれたサービスで、その金額は何と1回たったの500円!不定期で開催されていますので、詳しい情報は後ほど紹介する帝国湯のSNSをチェックしてみてくださいね。

帝国湯の湯を守るスーパーヒーローたち


たくさんの人に愛されていることが柔らかな表情に滲み出ている、
通称「釜じい」。

島根から上京してから60年もの間、帝国湯を守る「釜じい」こと石田勇(いさむ)さん。夫婦で帝国湯に住み込みで働きながら、子供たちを育ててきました。お湯を沸かす薪となるのは、廃材屋などから仕入れてきた大量の木材。のこぎりで切って薪にするという大変な作業です。現在では、番頭である娘さんが主に行っていますが、裏ではそれをしっかりサポート。釘の飛び出た木材を扱うのにも、神経を使います。「番台に立たないの?」という根強いファンからの声も多数。長年にわたり帝国湯を支える、守り神のような存在です。


「いつもへべれけです。」と言いながら、
はじけるような笑顔がまぶしい番頭の綾子さん。

「新米番頭です!」と謙虚な姿勢。小柄ながらもその背中は頼もしい。
それ、火吹き棒で吹くのですかと尋ねると「昭和か!」とキレの良いツッコミが。
大変失礼いたしました(笑)

両親が住み込みで働いていたことから、この場所で育ったという石田綾子さん。現在では番頭という責任ある役職を任されています。毎日9時に出勤しては換気や新聞の設置、洗濯物や釜の掃除を終わらせるのが朝のルーティーン。それが終わったら、裏手に回って火付けの大仕事がはじまります。熱い釜を前に、手を真っ黒にしながら薪をくべる大変な作業。焚口にパイプが並んでいるのは、空気が入りやすくするための工夫だそうです。釜で沸かしたお湯をバルブでコントロールし、湯加減を調節。古い建物であるだけに、器具などのメンテナンスにも労力とお金がかかりますが、浴槽のタイルの張替えをはじめとした修復作業も自ら行っているのだそうですよ。顧客の中にはお年寄りも多いことから、入浴中の体調への配慮も大切な仕事。「笑顔と感謝を忘れずに」をモットーに!体力仕事をこなしながらも、目配り気配りが欠かせません。

2023年7月に金額は改定されたものの、公衆浴場条例によって入浴料を上げることができない東京の銭湯。それゆえ苦境に立たされるお店も多いと聞きます。帝国湯も同様、家族経営で地域に愛されるお風呂を守ろうと日々奮闘。「この裏道の灯りを灯したい」と語ります。人手不足ゆえ女性スタッフが男湯に立ち入ることはもちろん、逆もしかり。「快適で安全なお風呂を守るため、日々努めておりますので広い心で受け止めてほしい。」とのお話もいただきました。素晴らしいお湯を守ってくださる皆さんに敬意を持って、お風呂に浸かりたいものですね!

手に入れたい!ファン垂涎のオリジナルグッズ


熱湯Tシャツ ¥3,000(税込)

おもわず「ねっとう」と読みたくなってしまいそうな、こちらのオリジナルTシャツ。帝国湯のスタッフさんたちも、もちろん着用しています。読み方は、もちろん帝国湯が誇る「あつゆ」。ぜひ入浴の記念にゲットしてくださいね!


手ぬぐい ¥1,300(税込)

万葉仮名で屋号の書かれた粋な手ぬぐいは、帝国湯ファンであれば必ずや手に入れたいグッズのひとつ。入浴時に持っていれば、きっとお隣のお客さんとの会話にも花が咲くはずですよ。過去にはオリジナルのタオルやステッカーも販売。今後も新商品の登場に期待です!

モダンなデザイナーズ銭湯や設備の優れたスーパー銭湯など、様々な温浴施設が次々と誕生する昨今の東京ですが、
107年もの歴史を誇る「帝国湯」は、数ある銭湯の中でも「“湯”一無二」の存在。(映画『湯道』の宣伝コピーより拝借。)
時が止まったような不思議な感覚を味わいに、一度訪れてみてはいかがでしょうか。

帝国湯のSNSでは変わり湯をはじめとしたイベント情報を発信中!
是非チェックしてみてくださいね。
帝国湯 X(Twitter)
帝国湯Instagram

帝国湯
営業時間:15:00〜22:00
定休日:月曜日
TEL:03-3891-4637
住所:東京都荒川区東日暮里3-22-3
入浴料:大人520円 中人(小学生)200円 小人(未就学児)無料


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荒川区西尾久にある蒟蒻・白滝・寒天・餡蜜のお店「山内商店」

昭和24年創業から、75年のも歴史を誇る山内商店。

昔ながらの製法で作られる手作り蒟蒻、ところてん、バラエティ豊かなあんみつなど、基本テイクアウトですが、店頭には気軽に利用できるベンチも設置してあります!

詳しくは、https://arakawa.news(当アカウントのプロフィールリンク)よりご覧ください。

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