荒川区のすぐれた技術、製品を内外に力強くアピールするために誕生した「ara!kawa」。「あら、かわってる。あら、かわいい。」をコンセプトに、荒川区でのモノづくりを応援するブランドです。このたびの荒川探訪では、令和6年度「ara!kawa」認定商品に選ばれた「TIMESHIFT」をご紹介。販売元であるイントロン・スペース株式会社のオフィスを訪問し、製品や荒川区でのモノづくりに関する想いを伺ってきました。
日常のあらゆるシーンから、宇宙へ!新たな可能性を切り開くTIMESHIFTとは
イントロン・スペースがオフィスを構える白鬚西R&Dセンター。 数々のスタートアップ企業が入居しています。
東工大発のベンチャー企業として、2019年10月東京都港区にて設立したイントロン・スペース株式会社。2021年に本社を荒川区へ移転し、南千住駅から徒歩15分ほどの距離にある白鬚西R&D(リサーチ&デベロップメント)センター内にオフィスを構えました。白鬚西R&Dセンターは、個人又は創業間もない中小企業向けに研究開発型の創業支援を行っている施設。イントロン・スペースも、東京都の助成金を受けこちらの建物に入居しました。
イントロン・スペース株式会社が製造・販売する「TIMESHIFT(タイムシフト)」とは、コンタクトブラッダー(体に直接装着可能な膀胱)のこと。尿を製品本体に溜め、トイレで中身を捨てることができる男性用の尿もれケア製品です。排尿のタイミングをコントロールし“時間差”を生み出すということが名前の由来。前立腺の手術後や介護のシーンではもちろん、渋滞や仕事で長時間トイレに行けない時など幅広いシーンでの活躍が期待されています。キャンプやレジャー、災害時の備えにも。将来的には宇宙での活用をも視野に入れています。一度宇宙服を着ると長い間トイレに行くことができなくなってしまうという飛行士たち。TIMESHIFTがあれば、オムツ着脱のストレスからも解放されます。
オムツに代わる“拡張ボディ”として期待が寄せられる「TIMESHIFT」。直接肌に触れることなく排泄の介助ができることから、互いのストレスを軽減できます。長時間寝たきりになることにより起きる“褥瘡(じょくそう)”とは、介護のシーンで深刻な問題となっている皮膚トラブル。排泄物が皮膚に接触することや、オムツ内が湿潤状態
国内ではすでに特許を取得し、現在海外に向けて特許出願中のTIMESHIFT。医師との連携を図りながら開発・販売を進めています。2023年には金沢大学附属病院にて手術後の患者の協力を得ることで、製品の有効性やQoL(生活の質)評価の実験を実施。首都圏を中心にモニターによる装着実験を実施し、テスト販売を経た上で2024年11月
バイオの視点で社会問題に立ち向かう
耐久性に富んだ素材を使用しているため、 写真のように全力で引き延ばしても 破れることがありません。
「TIMESHIFT」に使われている原料は、加熱すると軟化し冷却すると固化するという性質を持つ“熱可塑性樹脂(ねつかそせいじゅし)”。柔軟性に富んでいるため、ちょっとした刺激で破れる心配もありません。衛生的な観点から現在は使い捨てとなっていますが、将来的には回収して再生利用することも検討中。尿を吸収した紙オムツは燃えにくく、高齢化に伴って増加するオムツの焼却問題も、同商品を活用することで解決の一助になり得ます。TIMESHIFTの特長のひとつは、尿が逆流して漏れる心配がないということ。人間の静脈を模した“Bio-Mimic (生物模倣)”を、世界で初めて採用した構造となっています。この仕組みを取り入れようと決めたきっかけは「体に直接着けるものであるため、人体に近いものである必要がある」という観点から。長年にわたりLIXIL / INAXにて衛生管理や排泄ケアシステムの研究開発に従事してきた今井社長ならではのアイデアです。現在は男性用の製品のみですが、産前産後など多くの女性が抱える尿漏れ問題。女性向けの尿漏れケア製品の開発にも期待が高まります。
現在14名ほどの社員が在籍するイントロン・スペース。同ビル内にはオフィスと別室に、製品を製造するためのラボが設けられています。衛生管理の徹底された作業場には、安定した品質で効率的に製品を製造するための機械を開発。出来上がった製品はひとつひとつ手作業で検品が行われています。メガネが主だった時代、徐々にコンタクトレンズが普及していったように。コンタクトブラッダー(膀胱)が一般的に受け入れられるようになれば、ひとつひとつの単価を下げることも可能となります。TIMESHIFTを消費者にとって、より身近な存在へ。商品への認知度を高めていくことが、イントロン・スペースが掲げる次の課題です。
誰でも簡単に!TIMESHIFTの装着方法
TIMESHIFTを使用するにあたって必要なのは、本体に加えてリング、コック、専用アンダーウェアの計4点。本体のズレを防ぐためのリングを陰茎に取り付けたら、リングに被せる形で本体を装着します。本体の先端に取り付けるコックはワンタッチで開閉可能。本体の下部を指でめくり、内部の弁を尿道口に当てるように装着します。最後に専用のアンダーウェアを着用し、ポケット部分に本体を固定。交換の目安は1日で、使用後は可燃ごみとして処分します。自身で装着する場合と介護者が装着する場合、それぞれに適した方法がありますがコツさえつかめばいたって簡単。詳しい装着方法はホームページ上の動画でも紹介しています。
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TIMESHIFTの装着方法
排泄ケアで、最期まで自分らしく生きられる世の中に
共同創業者兼代表取締役、理学博士である今井茂雄氏。
今回取材に応じてくださったのは、これまで途上国におけるトイレのイノベーションに取り組んできたという今井社長。ここ数年は高齢化で深刻さを増す国内の排泄関連の問題を調査・研究してきました。コンチネンスケア(尿失禁対策)に特化した製品を作ろうと決意したのは父親の介護がきっかけ。シニアの活躍がまだまだ期待される現代において、排泄が原因で行動が制限されてしまうのは、経済的にも大きなダメージであると考えます。パッドとオムツしか選択肢がないという状況を覆し、アクティブな生活を可能な限り継続できるようにしてあげたい。最期まで自分らしく生きられる世の中にすると共に、若い介護従事者の負担を減らすことも狙いです。排泄によってストレスを抱えるあらゆる人々を救いたいという気持ちが商品開発の根幹。研究を進めていくにつれ医療や介護関係の人々からのお墨付きをもらうことができ、方向性に間違いがないことを確信していったそうです。
生きる上での基盤である排泄問題ですが、公の場での話題にあがらないことがほとんど。尊厳的な部分から一人で抱えこんでしまう男性も多いことから、排泄への悩みや商品の正しい使い方をシェアできるようなセミナーを区内で開いていきたいと話してくださいました。地域ぐるみで情報交換の場を設けることで、商品の認知をさらに広げていきたい。荒川区にはスタートアップ企業もたくさんあることから若い人たちとも協力し合っていきたい、とこれからの展望を語ってくださいました。
シニアや介護のシーンのみならず、キャンプなどのレジャーシーンや災害時の備えにも。トイレの頻度が気になる飛行機の中や飲酒時も、お守り代わりに持つことで活動の幅も広がります。“アクティブに活動できる豊かな人生を。” 荒川を舞台に将来への可能性を広げてくれるTIMESHIFTに、大きな期待が寄せられています。
イントロン・スペース株式会社
住所:東京都荒川区南千住8-5-7 白鬚西R&Dセンター
電話番号:03-6281-8763
ホームページ:https://intronspace.com/
Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=61560462062760
Instagram:https://www.instagram.com/intronspace/
X:https://x.com/IntronSpace
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