ミニ厨房庵スタートのきっかけは…
ミニ厨房庵の社長・河合行雄(かわいゆきお)さんはアパレル会社に勤めていましたが家業を継ぎ、2代目として金属プレス加工の工場を営んでいました。子育てがひと段落し趣味でミニチュア作りをしていた妻の朝子(ともこ)さん。当時本物と同じ金属でできた鍋などの調理器具のミニチュアがなく、行雄さんに製作を依頼したのがミニ厨房庵スタートのきっかけに。試作から1年ほどかかり最初の鍋は完成。ミニチュアは元の大きさの1/12に縮小し作成しますが、ただ小さくしただけではバランスが悪くなってしまうことがあるそう。最初の頃は、より本物に見えるよう長さや形をデフォルメしていくことが大変だったとお話ししていました。
手のひらに乗せてみるとこんなに小さい!
家族で支えるミニチュア製作
行雄さん、朝子さんの二人で2005年にスタートしたミニ厨房庵ですが、2008年には芸術系の大学を卒業した娘のあさみさんも加わります。金属加工は行雄さん、粘土物や木材加工は朝子さん、あさみさんの担当に。3人の力が合わさることで一つの作品が出来上がっている、「作品」=「家族の絆そのもの」なんですね。
イベント出展などの活動も行なっているミニ厨房庵。「ミニチュアを広めたい」という思いから月1回ほどのペースで全国のミニチュアのイベントに出展したり、全国のミニチュア作家たちを集めて大手百貨店で作品を展示・購入できるイベントを開催したりしています。ミニチュア作品のイベントは準備がとても大変!細やかなものなので扱いをとても慎重にしなければいけなかったり、展示準備に時間がかかったり、展示そのものがミニチュア作家の作品の世界観を表現するものなのでその世界観を表現できるように気配りが必要だったりするそう。ミニチュアを広めるための土台を作る苦労、沢山あったんですね。そして時代に合わせてSNSも駆使してミニチュアを広げる活動をしているミニ厨房庵。「みんなをまとめてくれたり、SNSを使って広める活動をしてくれたりして、ここまで来れたのは娘(あさみさん)のおかげなんです。」と朝子さんはあさみさんへの感謝を語っていました。
ホテル雅叙園東京にて2025年1月〜3月に開催された 「ミニチュア×百段階段 ~文化財に広がるちいさな世界~」で 展示されたミニチュア作品。
ついさっきまで、 ここで人が宴会を楽しんでいた空気が感じられます。
居酒屋にある生け簀は、まるで本当に水が流れていて、 アワビやタコが生きているかのようなリアルさです。
種類豊富なミニチュアたちの特徴
調理器具や什器、食べ物まで様々なものをミニチュアで再現しているミニ厨房庵。鍋ひとつをとっても銅、鉄、ステンレスなど使用する素材が様々あり、素材ごとの特徴があります。例えばステンレスは硬いため鉄を加工する時の3倍もの力が必要ですが、逆に銅は柔らかいため穴を開けるときにドリルの熱で溶けてしまうことがあるそうです。それぞれの特徴を捉えて金属を加工しミニチュアを作る、これはミニ厨房庵ならではの技術といえます。
食品の製作は空気に触れると乾燥する樹脂粘土を使用。下記の写真はスーパーのお総菜売り場。具材まで緻密に表現されたお料理が並んでいます。製作方法は様々ですが、例えばキュウリなら、まずはキュウリ1本を製作し、それを輪切りにカットして盛り付けていくそう。想像では追いつかないほどの手間をかけ、まるで料理をするかのようにミニチュアを作っているのが驚きでした。
実際の店舗や建物の再現も!
取材時に製作していたのは「回転寿司店」・「スーパーマーケット」のミニチュア作品。回転寿司はお寿司や小物の再現度はもちろん高いのですが、こちら、お寿司を乗せたレールが本当に回るんです!レールの回るギミックは行雄さんがご自身で作ったもの。作りこみ度の高さに感動!
そしてスーパーマーケット。サラダやおでんが入っている什器も行雄さんの作品。朝子さん、あさみさんの作る食べ物のミニチュアの数々は、そのまま口に運んでしまいそうなほどの再現度!肉汁溢れる餃子や熱々感が伝わってくるおでんの様子、何度見ても本物なのではないかと疑うほど。
製作期間はばらつきはあるものの、一つの店舗が完成するまで1年ほどかかるそう。実際のお店の厨房を再現したミニチュアの製作期間は2年!2年かかった理由は、実際に厨房を見ながら忠実に再現していったからだそう。
レストランアラスカ 日本プレスセンターの厨房を 再現したミニチュア作品
注文を受けてお店のミニチュアを作ることもあり、取材時は九州にある歯科医院のミニチュアを、送ってもらった図面や写真を参考に製作中でした。歯科医院の設備だけでなく置いてあるぬいぐるみや、看板・花壇まで忠実に再現。ちなみに、お店をたたむときに思い出としてミニチュアにする方が多いのだそう。
海外からも訪れる人も!
お客さんの大半はミニチュア愛好家の方が占めているようですが、什器や調理器具を購入するためにわざわざ日本まで足を運ぶ方も。海外でもステンレス製のミニチュアを製作している所はなく、「それを目当てにして来てくれる方がいることがとても嬉しいこと。」と行雄さん。
気持ちを閉じ込めたミニチュアを遠くまで運びたい
「次に作りたいのはアメリカンダイナーなんです。」と試作途中の回転扉を見せてくださいました。海外のご友人が送ってくれたジュークボックスなどを参考にして製作しているそう。
「自分の作ったものをどこか遠くまで運びたい、というのが夢だった。」「うちでしかできないもの、技術ではなく“気持ちを閉じ込めたミニチュア”を作っていくことを大事にしていきたい。」という行雄さん。世界中からミニチュア製作の注文がきたり、海外からミニ厨房庵の皆さんに会いに来る人がいたり、人の温かさを感じるミニ厨房庵のミニチュアは遠くに届き始めているんだなと感じました。
最後に「ミニ厨房庵」というお名前の由来についてお聞きしました。行雄さんの「庵」を使いたいという思いと、ミニチュア鍋を作ったことが始まりだったこともあり「ミニ厨房庵」と名付けられました。ただ海外だと「ミニ厨房庵」が発音できず伝わらないということで、「TYA Kitchen」の名前も使っているのだそうです。ちなみにTが朝子さん、Yが行雄さん、Aがあさみさんを表していて、ここでもご家族のつながりを感じられます。3人の雰囲気はとても穏やかですが、取材中も製作途中のものの色やディティールについて相談されていてミニチュアへの熱い思いを感じました。忠実に、そして人が使っているような温かさを持ったミニチュアの世界がミニ厨房庵にありました。
ミニ厨房庵
営業時間:平日10:30〜16:00
定休日:土曜日、日曜日
電話番号:03-3893-0996
住所:〒116-0011 東京都荒川区西尾久5丁目13-2
公式ホームページ:https://minityuan.ocnk.net
X:@minichuubouan_t
Instagram:@minichuubouan_tyakitchen/
その他:工房への来店は予約制となっています。
詳しくはこちら→https://minityuan.ocnk.net/product/3669
各イベントでミニチュア製作体験を実施。詳しくはSNSをご覧ください。
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