荒川区民に「荒川グルメといえば?」と尋ねると、多くの人が「もんじゃ焼き」と答えます。
荒川区はもんじゃ発祥の地ですよ、と区民は聞かされて育つのですが、都内に住む多くの人は「もんじゃ焼きと言えば月島(東京都中央区)」と思っていることでしょう。発祥であろうがなかろうが、荒川区のもんじゃは美味しい。下町の雰囲気も含めてもやはり一番美味しいのです。食の楽しみ方はひとそれぞれ。特別な何かは無いけれど、ちょっと個性的だったり、変わっていたり、ほっとひと息つける場所。そんなモノづくりの街・荒川を支えるグルメを探訪してご紹介していくコーナー、それが「荒川グルメ探訪」です。
小台に忽然と現れた、本格中華と刀削麺の隠れた名店
都電荒川線(東京さくらトラム)小台駅から1分ほど北に歩くと、「優香刀削麺(ゆうかとうしょうめん)」の看板が見えます。「こんなお店あったかな?」と思い入ってみると、刀削麺だけでなく様々な中華料理も提供されていました。
厨房からは流暢な中国語が聞こえ、どうやら家族で営んでいるお店のよう。娘さんと思われる女性が抜群の記憶力で注文を受け、テキパキと料理を運び、片付け、レジをこなし、厨房ではスピーディーかつ華麗に料理を仕上げる様子が見えます。坦々刀削麺に餃子などのサイドメニューをつけて注文してみたところ、期待以上の味!
何となく漂う温かい雰囲気と、店主の確かな腕前・・・これはいろいろと話を聞いてみたい!そう思い取材をお願いしたところ、大学に通いながらお店を手伝っているという娘さんの書萌(ショメイ)さんが、忙しい合間を縫って後日対応してくれることに。
本場の味の秘密
料理人のこだわりが生む手間暇かけた絶品料理
優香が提供する妙味の秘密は、店主の料理に対する細やかなこだわりにありました。店主は中国遼寧省大連(りょうねいしょうだいれん)周辺のご出身で、日本に来る前から現地で料理人として経験を積んでいたそうです。注文を受けてから調理を始め、ソースは全て自家製。火加減や油の使い方など、素材の味を引き立てる工夫が随所に見られます。出身地である遼寧省の味も提供しつつ、お客さんがおいしいと思ってもらえるような料理を提供するため日本人の舌に合うよう工夫された中国各地の味と、優香オリジナルのメニューも多く提供しています。
一度は試したい!「優香」自慢の人気メニュー
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「山椒麻辣刀削麺」
まず、お店の看板メニューである刀削麺は必食。中国山西省の伝統的な麺料理で、生地を削りながら切り出すため、厚みのある独特の形状とモチモチとした食感が特徴。優香では注文が入ってから自家製の麺を削り提供されます。
オススメの「山椒麻辣刀削麺(さんしょうマーラーとうしょうめん)」は、日本人になじみのある担々スープに山椒が効いた絶品。ひき肉は豚バラブロックを仕入れて、店主が機械で引いたものを使っているそう。
今回は注文しませんでしたが、 おすすめの山椒麻辣刀削麺 800円(税込880円)
ちなみに、牛肉麻辣刀削麺(後述する牛バラ麻辣刀削麺と近い味)は中国人のお客さんに人気があるそう。全く違う風味なので、より中国を味わいたい人にはお勧めです。
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「エビマヨ」&「ナスの塩コショウ炒め」
優香の人気料理で、荒川探訪もイチ押しのメニューが「エビマヨ」と「ナスの塩コショウ炒め」。「ここのは味が違う」とリピートされるお客さんも多いのだとか。エビマヨは先に衣をつけておくと味が変わってしまうため、注文が入ってから衣をつけ、新鮮な油でカリっと仕上げます。
エビマヨ980円(税込1078円)
ぷりぷりのエビにサクサクの衣、マヨネーズと自家製ソースのバランスが絶妙でやみつきになる味です!
ナスの塩コショウ炒めは、皮を剥いたナスを油で揚げ、塩コショウで味付けをしたシンプルな料理なのですが、表面がカリっとしているのに中がトロトロでおいしい!皮を剥くというひと手間と、新鮮な油の使用、火加減など細かなこだわりでこの味を実現しているそう。優香に来た際にはぜひ注文してみてほしい一品です。
ナスの塩コショウ炒め880円(968円)
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湖南名物ジャガイモ干鍋
インパクト大の見た目で登場したのは、中国湖南(コナン)名物ジャガイモ干鍋(ガングォ)。お客さんからは「カラ●ーチョ(スパイスのきいたポテトチップス)の湿ったバージョン」と呼ばれているそうですが、なんとも的確な表現!辛い物が好きにはたまらない一品です。
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湖南名物ジャガイモ干鍋880円(税込968円)
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海鮮ニラ焼き餃子
こちらは、お母さんの手作りで、注文が入ってから包みます。ぷりぷりのエビが入っていて、ニラ、卵、イカのすり身、お店で引いたひき肉などを使った優香オリジナルレシピです!
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海鮮ニラ焼き餃子(3個)298円(税込328円) 中国のお酒、紹興酒(しょうこうしゅ)といただきました。 お店ではお料理を日本酒やハイボールと合わせて 飲む方も多いそうです。
その他、麻婆豆腐や自家製杏仁豆腐など、優香でしか食べられない味の料理もあるので、訪れた際はぜひ試してみてください。
中国東北地方の本格料理も楽しめる!
大連は煮込み料理が多いそうで「白菜漬け鍋」という料理が有名だそう。お店にも「スペアリブ白菜漬け鍋」や「中国東北名物のトウモロコシ餅が入ったカキ鍋」など、様々な鍋料理があり本場東北の味を楽しむことができます。
今回は中国人好みの味だという「牛バラ麻辣鍋(つけ刀削麺)」1280円(税込1408円)を頼んでみました。圧力鍋で煮込まれた牛肉とスパイスが絶妙に調和した、とろみのあるスープに麺を絡めて食べます。
山椒の風味が食欲をそそり、辛さと深みのある味わい。日本人には少し馴染みのない味かもしれませんが、スパイシーな料理が好きな方はきっと楽しめると思います。優香を訪れたら一度は煮込み料理を注文したいものです。
また、東北には「大学芋」の名物もあるそうで、こちらもいただきました。
東北名物大学芋 980円(税込1078円)
私たちに馴染みのあるとろみのある大学イモではなく、砂糖のみでコーティングしているため甘くパリパリの食感!時間が経つと砂糖がカチコチに固まってしまうので、出されたらすぐにいただきましょう。
盛り付けは飴細工を見ているようでした
100度以上で溶かした砂糖のコーティングはやけどの危険があり、また溶けた状態の砂糖を口に入れると砂糖が歯にくっついてしまうということもあるため、熱々の大学芋を水につけて外身をパリパリにしてから食べる食べ方が大連流。酸味のあるオレンジジュースと合わせてもおいしく食べられるそうですよ。
家族で支え合いながら歩んできた道
一家が日本へ移住したのは、店主が足立区の中華料理店で働くことになったからだそうです。当時は家族の誰も日本語が話せなかったのだとか。
「言葉がわからず大変なこともあったのではないですか?」という質問に、「当時私は8歳だったこともあり受け入れが早いので、あまりそうは思いませんでしたね。」と笑顔で答える書萌さん。
優香はコロナでレストラン業界が打撃を受けたことをきっかけに、自分たちのお店を持とうと決心して開店しました。2021年のオープン時から手伝いをしている書萌さん。オープン当初はコロナ禍で客足が読めないこともあり、最初から家族でやろう決めていたそうです。大学に通いながら手伝いをすることの大変さを尋ねてみると、「自分たちのお店なので。」と迷いのない回答。「もう慣れちゃったんですよ、夜ここにいるのが。」と明るく話す書萌さんの言葉からは家族を思う温かさと強さを感じました。
開店後しばらくは、「細い麺はないのか?」と聞かれたり「これじゃ売れないぞ」と厳しい言葉もかけられたことも多々あったそうですが、1年過ぎた頃から刀削麺を求めて来てくれるお客さんが増えてきて、徐々に地域住民に受け入れられていったそうです。今ではすっかり地域に根付いたお店となった優香。「気軽に入ってきてくれたら嬉しい。」と話してくれました。
優香は地域に溶け込み、アットホームで気負わない雰囲気の中で本格的な味を楽しめる貴重なスポット。ぜひ一度足を運んで、その魅力を味わってみてくださいね!
優香刀削麺
営業時間:ランチ11:00~14:30 ディナー17:00~22:00 (※テイクアウトもやっています)
休業日:火水木のランチのみ定休。
TEL:03-6240-8297
住所:〒116-0011 東京都荒川区西尾久3丁目22-15 昌栄堂高橋ビル 1F
※あらかわ遊園の近くという事もあり週末は家族連れでにぎわいます。混雑を避けたい方は平日がおすすめです!
モノづくりの街・荒川の地域情報サイト「荒川探訪」では、荒川区の気になる情報をご紹介しています。
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これまでに取材したお店などのスポットは荒川探訪マップにまとめています。付近の散策や荒川探訪ルートを考えたりするのにぜひご活用ください。
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