使わなくなったランドセルを
ミニチュアサイズに!
このたび荒川探訪が取材に訪れたのは、使わなくなったランドセルを加工してかわいらしいミニランドセルを製作してくれる「梅田皮革工芸」。6年間の思い出が詰まったランドセルをできるだけ元の姿のまま残してあげたい!という想いで、革職人の寺岡孝子さんが2001年に設立した工房です。もともとは浅草の製鞄工房で働いていたという寺岡さん。ミニランドセルという存在に出会い、よりこだわった商品を作りたいという想いから自分だけの工房をスタートさせました。屋号の梅田は、愛着のある旧姓から。現在は高校生と小学生の姉妹を持つ二児のお母さんで、工房として使用しているのは南千住の駅から少しだけ離れた集合住宅の一室です。ご自宅からすぐ近くの場所ということもあって、子育てをしながらお仕事をするのに最適の環境。お子さんの学校や習い事の合間を縫って作業をしています。
天井が高く開放的な作業場内。 心地良い春の風が、 カーテンをやさしく揺らしていました。
荒川区町屋育ちの寺岡さん。小さい頃からモノを作ったり描いたりすることが大好きで、お子さんが小さい時にはランドセル以外の小物も手作りしていたそうです。開業当初はなかなか注文の入らない時期もあったそうですが、新聞やラジオで宣伝をすることで少しずつ認知されるように。過去にはお昼の人気テレビ番組で取り上げられたこともあり、現在では荒川区ふるさと納税の品にも認定されています。
荒川区では、高い技術と卓越した技能をもって後進の指導・育成に力を注いでいる方々を「モノづくりの街・荒川」を象徴する「荒川マイスター」に認定しており、なんと今回お話を伺った寺岡さんもそのおひとり。現在、荒川区役所の1階玄関ロビーでは梅田皮革工芸のミニランドセルを展示しています。
ミニランドセル加工代金 ¥19,987(税込) 刺繍や校章、落書きなどお気に入りの部分もそのままに残せます。
一般的なミニランドセルがカブセ(蓋の部分)から全てのパーツを作り出しているのに対し、寺岡さんの手掛けるミニランドセルは元のランドセルのパーツをそれぞれ最大限に活用していることが特徴。肩ベルトや金具に付いた傷や擦れも、ご希望に応じてそのままに活かします。出来上がりは元のサイズの4分の1ほど。鋲(びょう)なども元のものを使用するので、対比によりランドセルの表情もよりかわいらしくよみがえります。場所をとらずに飾っておけることが最大の利点。懐かしい思い出をいつまでもそばに置いておくことができますよ。
ミニランドセルができるまで
これまで数千個のランドセルを解体・ミニ加工してきたという寺岡さん。間違いを防ぐため、1日に作業するランドセルはひとつ限りと決めています。ひとつのランドセルにかける時間は丸1日!中には1日で完成しないものもあるそうです。
まずは肩ベルトをカッターで切り離すところからスタート。本体部分も、箱を解体するように立体から平面にしていきます。ベルトの付け根の金具など、細かいパーツも再利用。ミニランドセルには大きすぎて使えない錠前などは、台東区にある行きつけのお店に自ら買いにいっているそうです。
ポケットのファスナーを取り外したら、ギザギザの務歯(ムシ)をむしって短く加工。短いものに付け替えた方が早いはずなのですが、使える元のパーツはすべて再利用することを目指します。ハサミやカッターでひとつずつ解体していく地道な作業。大切な工程の前には必ずカッターの刃を交換しているそうですよ。カブセのフチなどからは鉛筆の芯やペットの毛が出てくることも!持ち主の個性が垣間見れる瞬間です。
ミニランドセルのパーツ作りにまず必要なのは、専用の型とテコの原理で5トンの力が加えられるという革用の裁断機。オーストラリア産の機械で、レザークラフトの世界では幅広く使われているものです。
当時触れていたものをなるべく多く残したいという想いから、必要なパーツはできるだけ元の同じパーツから取り出しているのだそう。足らない部分は一番大きい面積のカブセ部分から作り、ハート型やミッキー型などの特殊な形状は、型を使わずカッターで切り出しています。
余り布を使用したICカードケース 手縫いキット ¥1,000(税込) ※裁断・穴開け済み。
基本的には処分しているというハギレの部分ですが、希望に応じて返却も可能。余った部分でかわいいICカードケースを製作することもできますよ。「自分で作ってみたい!」という方には、手縫いの穴を開けた状態で郵送してもらうことも。針と糸もセットになっているので、届いた瞬間からちょっとした手作り体験が楽しめます。
レトロでかわいい見た目の機械“NIPPY”は、素材の厚みを調節する日本製の皮すき機。ミシンのようにフッドペダルを踏むと円筒状の刃がぐるぐると回転し、あっという間に加工しやすい厚さにしてくれます。押さえの高さを調節することで、好みの厚さに調節可能。ミニランドセルを作る上での大切な作業のひとつです。
お仕事がしやすいように整えられた作業スペース。 ライターが磁石でミシンに付けられているのは、 作業中にどこかへ行ってしまわぬようにという 寺岡さんオリジナルのアイデアです。
パーツがすべて揃ったら、お次は小さいランドセルを組み立てていく作業。素振りのように何度もイメージトレーニングを繰り返してから、慎重に針を下ろします。静かな部屋に心地よく響くミシンの音。機械でできない細かい部分はすべて手縫いで行います。元々の縫い目を一針一針手縫いで拾っていくという独自の製法。ロウを塗った太いミシン糸で縫い上げて、最後はライターの火で熱処理を施します。お仕事中は常に本気モード。複雑な作業ではありますが、集中して作業しているので失敗したことはあまりないそうです。硬い素材を扱っているだけに、時には手が痛くなることも。ランドセルが好き!という想いがモノづくりへの原動力です。
元職場でお世話になった方には「よくそんな面倒な作業ができるね」と、言われたことも。寺岡さんのお仕事に向けた情熱が伺えるエピソードですね。
どんなランドセルでもミニチュア化してしまう梅田皮革工芸。それでも、素材の劣化があまりにひどい場合はお断りすることもあるそうです。特に人工素材は傷みやすく、長時間放置しておいたものなどは注意が必要。小学校を卒業後は、なるべく早くの加工依頼がおすすめです。
大切な思い出を、一生の宝物に
もともと入っていた時間割を折りたたんで収納。 ランドセルを開いたときの感覚も そのままに取り出せます。
物心ついた時には荒川に住んでいたという寺岡さん。お父様が印刷関係の会社にお勤めで、ランドセルカバーへのプリント印刷を行っていました。通常はカバーに印刷をするところ、ランドセル本体に直接プリントを施してくれたことは小学校時代の特別な思い出。大好きなスヌーピーとウッドストックのプリントを施したお気に入りのランドセルは中学2年生の頃に処分してしまったそうです。もしも当時その技術があったとしたら…今ごろ素敵なミニランドセルとなって、生まれ変わっていたかもしれませんね!
お気に入りのタグやロゴもそのままに。 フチについた傷や汚れも、懐かしい思い出です。
ミニランドセルのご依頼方法はお申し込みフォームに記入後、工房にランドセルを送付するだけ。出来上がりの希望やランドセルにまつわるエピソードも紙に書いて同封しましょう。他社ではNGだった特殊なランドセルもあきらめる前に一度ご相談を!お近くにお住まいの方は、直接工房に相談にくるケースもあるそうです(要事前予約)。依頼者の中にはこれまでお子さんとのお別れを経験したという方も。要望は可能な限りくみ取ることで、理想の形を再現します。
出来上がったミニランドセルがお手元に届いたら、色違いのランドセルを並べて飾ったりお気にいりのぬいぐるみに背負わせてみたり。活用方法や飾り方のアイデアは梅田皮革工芸のブログでも紹介されています。
それぞれのストーリーを背負った、世界にひとつだけのミニランドセル。背負ってカタカタ鳴る音までもそのままによみがえります。
大切な小学校時代の思い出を、一生の宝物に。荒川が誇るマイスターの技術で、お手元のランドセルを生まれ変わらせてみませんか?
梅田皮革工芸
住所:東京都荒川区南千住3-41-1-106
公式ホームページ:https://hakodateume.com/
Facebook:https://www.facebook.com/hakodateume?_rdr
Instagram:https://www.instagram.com/hakodateume
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