荒川区民に「荒川グルメといえば?」と尋ねると、多くの人が「もんじゃ焼き」と答えます。
荒川区はもんじゃ発祥の地ですよ、と区民は聞かされて育つのですが、都内に住む多くの人は「もんじゃ焼きと言えば月島(東京都中央区)」と思っていることでしょう。発祥であろうがなかろうが、荒川区のもんじゃは美味しい。下町の雰囲気も含めてもやはり一番美味しいのです。食の楽しみ方はひとそれぞれ。特別な何かは無いけれど、ちょっと個性的だったり、変わっていたり、ほっとひと息つける場所。そんなモノづくりの街・荒川を支えるグルメを探訪してご紹介していくコーナー、それが「荒川グルメ探訪」です。
そばを挽く音が心地よい
和モダンな店内
今回荒川探訪が取材に訪れたのは、千代田線町屋駅1番出口から徒歩5分の場所にある「手打ち蕎麦 うじいえ」。住宅街の中に佇む和モダンな門構えのお店で、大きく店名の書かれた看板と鮮やかな朱色の幕が目印です。目の前にあるのは、古民家を利用したコワーキングスペース「ivyCafe町屋」。今回はそちらの常連さんからの推めで、取材をお願いする運びとなりました。お店の自慢は、なんといってもベテランのそば職人である大将の手打ちそば。枠にはまらない、アイデア満載のお料理にも注目です。大将である氏家さんは40年もの間、そばを打ち続けているという熟練のそば職人。以前は別の場所でお店を営んでいましたが、健康上の理由から一度はお店を閉めることとなりました。現在の場所にお店を構えたのは、2013年11月のこと。町屋にある実家の敷地内を利用して、お店をオープンしました。人通りの少ない場所ではありますが、丁寧な仕事をしていればきっと人は来てくれるはず。内装も広く見えるような造りにするなど、居心地の良い空間づくりにこだわります。扉を開けるとガラス貼りのそば打ち場がお出迎え。石臼がそばを挽く音が、カラカラと鳴り響いています。
大将自慢の手打ちそばを
ご堪能あれ!
柚切りせいろ ¥1,000(税込)
定番のせいろはもちろんですが、大将が趣向を凝らした旬の「創作そば」は是非とも試していただきたいメニューのひとつ。取材時には、生の柚の皮を使用した「柚切りせいろ」が提供されていました。ライトを受けてキラキラと光る黄色のおそば。使用しているのは、丁寧にすりおろした生の柚の皮です。白い部分が混ざると苦味が出てしまうため、黄色い部分だけを丁寧に。表面のみを薄くすりおろしてそば生地に練り込みます。
春には桜の塩漬けを練りこんで作る桜せいろや鮮やかな緑の抹茶せいろ、夏には爽やかな柑橘類を用いたせいろなど。四季折々、旬の食材を用いたおそばで目と舌を楽しませてくれています。
天ぷらそば ¥1,850(税込)車海老2尾・野菜3品
お次に紹介するのは、サクサクの天ぷらが贅沢に味わえる「天ぷらそば」。大ぶりの車海老と一緒に盛られているのは、なすとかぼちゃ、さつまいもの天ぷらです。揚げ油には素材の味を活かしつつ、カラッと仕上がる綿実油(めんじつゆ)を使用。熱が均一に伝わり保温性の高い銅鍋を用いていることもこだわりのポイントです。美しくきめ細やかな衣をまとった天ぷらに舌鼓を。もちろん、麺つゆにつけても美味しくいただけますよ。
牡蠣南(かきなん)蕎麦 ¥1,800(税込)
季節のメニューからは、冬限定の「牡蠣南(かきなん)蕎麦」をご紹介。関西風のあっさりとしたおつゆが特徴です。大ぶりの牡蠣が特別感満載のメニュー。わかめや長ネギ、三つ葉、ゆずもおそばの味を引き立てる立役者です。旬の食材でちょっぴり贅沢なひとときを…。暖かいおつゆに冷たいおそばを付けていただく「牡蠣のつけ蕎麦」も、おすすめの一品です。
そばつゆのお出汁には、風味豊かな北海道産の昆布とコクのある宗田かつおを使用。時間をかけて煮出した後は、そばと相性の良い最高級のお醤油で仕上げています。もり汁用のお出汁はそばによく絡むようにと濃い目の味付け。最高級の鰹節を用い、かえしを合わせてしっかりと寝かせます。市場で仕入れた野菜や鮮魚などの食材も、素材に合った調理法で。魚河岸(足立市場)が近く仕入れがしやすいこともお店の強みです。
心をととのえて…
熟練のそば打ちを目の前で
目の前でそばを打つ様子を見ることができるのもうじいえの魅力。ガラス貼りのそば打ち場の壁には、長さや細さの異なるいくつものめん棒が掛かります。夏は窯の熱がこもってサウナ状態になるのだとか。先ほどまで冗談を言って場の雰囲気を和ませてくれていた大将も、中に入るとキリリとした表情に変わります。そば打ちは大変な作業だけれども、一番作り手の気持ちがでる食材。打つ時は心を整えてからそば打ち場に入るのだと教えてくださいました。白木の美しい台の上でのばされていくそば生地。おなじ行程を何度も何度も繰り返し、10分ほどで反物のように薄くのばされた板そばが出来上がります。
出来上がった生地がそば切り包丁でテンポよく切り刻まれていく様も、見ていて気持ちのよいもの。たっぷりのお湯で茹で上げた麺は、大きな氷の張られた専用の装置ですばやく締めていきます。一日に打つおそばは通常お昼に2回と閉店前に1回。打ったおそばは2日も経つと色が変わり酸味が出てきてしまうため、そう長くは持ちません。一連の作業は手の熱が伝わる前に手早く行う必要があるのだそう。手作業でしか出すことのできない微妙な力加減が要です。機械に頼るのは簡単ですが、どうしても固いおそばに仕上がってしまう。うじいえが手打ちにこだわる理由のひとつです。
うじいえのおそばは、風味を強く感じることのできる「外二(そとに)」のおそば。一般的に「二八そば」といえば、8割のそば粉に2割の小麦粉をつなぎとして使用することを指しますが、対して「外二」は10対2の割合。そば粉の分量が多い分、そばの味をより引き出すことができるそうです。
原材料であるそば粉は、北海道や群馬、茨城といった国内各地の農家から取り寄せたものを使用。味や風味を最大限に引き出すように心掛けています。取材日に使用していたのは、北海道の新そば「きたわせ」。日本屈指のそば産地、摩周産のおそばです。挽き方ひとつにしても甘味を引き出したい時には細かく、風味を出したいときには荒く。大将の感覚が頼りです。
おそばに含まれているルチンには免疫向上や老化予防などが期待できる健康要素がたっぷり! 食後には栄養がたっぷり含まれたそば湯もぜひお召し上がりくださいね。
大将のアイデア光る!
オリジナルの蕎麦前料理
そば粉のクレープ北京ダック風 ¥980円(税込)
「蕎麦前」とは、そばを食べる前にお酒をたしなむことの意。江戸の頃からそば屋はお酒を飲むところとしても親しまれてきました。そばが出来上がる間におつまみを注文し、お酒を飲んで待つ。板わさや玉子焼きなどが定番ですが、うじいえの魅力は一味違った蕎麦前料理です。
「そば粉のクレープ北京ダック風」は、たっぷりのお野菜と甘いお味噌をそば粉を使ったクレープ生地で巻いた変わり種メニュー。見た目はブリトーのようですが、味わいは北京ダックそのものです。甜麺醤の代わりに甘味のあるそば味噌を使用しているのも、おそば屋さんならでは。仕上げには揚げたおそばを添えるなど、盛り付けにも大将のセンスが光ります。
だし巻き玉子 ¥850(税込) ※焼きあがりにお時間をいただく場合があります。
定番の「だし巻き玉子」は、サイドメニューの中でも一番人気の品。ふんわりとした食感で、口に頬張ると出汁の旨味がじんわりとあふれます。めんつゆと同じ出汁を使用しているため、お食事やお酒との相性も抜群!時間が経っても美味しくいただけるので、お土産の品としても最適です。
そば粉のジェラート ¥450(税込)
デザートにまで趣向を凝らした、うじいえのメニュー。そば粉を練りこんだジェラートは舌ざわりも滑らかです。さくさくとした食感のトッピングは、素揚げしたそばの実。お食事の最後を締めくくるのにぴったりの一品です。そばの刺身やそばがきなどといったおそば屋さんならではのメニューから、洋風のテイストを取り入れたお洒落なメニューまで。インタビュー中も、スマホで撮影した試作品の数々を見せてくださいました。
お祝いごとや接待の席には、お刺身や天ぷら、デザートなどを含んだ充実のコース料理がおすすめ。季節ごとに異なる味わいが楽しめます。(要予約)ご興味のある方はぜひお店までお問い合わせくださいね!
希少な日本酒からワインまで!
豊富なお酒のラインナップ
焼酎各種を取り揃え、常連さんのボトルも数多く並ぶうじいえの店内。生ビールもなんと3銘柄が用意されています。種類豊富なお酒のラインナップもお店の自慢。知り合いの酒屋さんから仕入れを行っているそうで、森伊蔵などをはじめとした希少なお酒が揃います。この日勧めてくださったのは「亀齢」という縁起の良いネーミングのお酒。信州で作られているフレッシュな口当たりが特長です。(入荷状況は来店時によって異なります。)
おそばとワイン。以外な組み合わせではありますが「飲みたい人も多いので」と、店内にはワインセラーを二カ所に設置。より美味しく飲んでもらえるようにとグラスにもこだわります。セラー内には、チリ産やスイス産など各国のワインがズラリ。都内で有名洋菓子店を営む弟さんの助言を受けてセレクトしたものだそうですよ!
おいしいおそばで笑顔を届けたい!
明るい雰囲気の店内には、座り心地のよい椅子が設えられたカウンターが7席と、最大10名様まで利用できる個室を用意。トイレなどのインテリアも細部までこだわります。全席禁煙、女性客が一人でも立ち寄れる雰囲気が魅力。笑顔が素敵な店員さんたちのホスピタリティも、うじいえの人気の秘密です。
大将の氏家洋治さん。 時にはカメラを向かってピースサイン! お茶目な一面も披露してくださいました。
お神輿にゴルフ、 楽しいことが大好きな大将の氏家さん。地元のお祭りのときには、お店をお休みにすることもあるのだとか。会話の端々には「カムサハムニダ!」「ケンチャナヨ!」と、お勉強中の韓国語も。どうやら韓国旅行に行ってきたばかりのようで、インタビュー中も楽しいお土産話をたくさん聞かせてくださいました。
お仕事には真っ直ぐですが、楽しいお人柄の大将。「細かいことは気にせずに、お客さんには笑顔で帰ってほしい!」と語ります。
心を込めて打ったおそばを食べれば、帰り道はきっと笑顔になっているはず。心も身体も元気にしてくれる「手打ち蕎麦 うじいえ」に、ぜひ足を運んでみてくださいね。
手打ち蕎麦 うじいえ
営業時間:11:30~14:00 17:30~22:00 (L.O. 21:30)
休業日:月火
TEL:03-6807-8538
住所:東京都荒川区町屋3-5-13
ホームページ:http://www.sobaujiie.com/index.html
手打ち蕎麦 うじいえ 公式X
手打ち蕎麦 うじいえ 公式Instagram
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