荒川区民に「荒川グルメといえば?」と尋ねると、多くの人が「もんじゃ焼き」と答えます。
荒川区はもんじゃ発祥の地ですよ、と区民は聞かされて育つのですが、都内に住む多くの人は「もんじゃ焼きと言えば月島(東京都中央区)」と思っていることでしょう。発祥であろうがなかろうが、荒川区のもんじゃは美味しい。下町の雰囲気も含めてもやはり一番美味しいのです。食の楽しみ方はひとそれぞれ。特別な何かは無いけれど、ちょっと個性的だったり、変わっていたり、ほっとひと息つける場所。そんなモノづくりの街・荒川を支えるグルメを探訪してご紹介していくコーナー、それが「荒川グルメ探訪」です。
創業80年!愛され続ける下町の味
今回、荒川探訪がご紹介するのは創業から約80年もの歴史を誇る「桜せんべい」。開店当時から変わらぬ桜のイラストがトレードマークで、過去には人気のバラエティ番組で取り上げられたこともありました。某有名歌舞伎役者が30年以上食べ続けているとブログで紹介してから予約も殺到!平成17年には、区民が選ぶ「荒川のおすすめ品」にも選出されています。
お店が位置するのは、常磐線線路脇の静かな路地裏。東京メトロ日比谷線三ノ輪駅からは徒歩1分、都電荒川線(東京さくらトラム)三ノ輪橋駅からは徒歩2分ほどでアクセスできます。昔ながらの商店が軒を連ねるジョイフル三ノ輪商店街からは国道を一本挟んだところ。周りに他のお店もないため、落ち着いてお買い物が楽しめます。
桜せんべいが誕生したのは昭和20年頃のこと。現店主のお父様が他のお店でノウハウを学び、この地でお店を開きました。かつてはお店の横のスペースでおせんべいを焼き販売していたのだそう。時代と共に炭火で焼くお店も減り、現在では売り場の奥のスペースがおせんべいを焼く作業場となっています。
1枚100円以下!?
王道から変わりだねまで
厚堅焼き 中丸 無地 65円(税込)
数あるおせんべいの中でも一番人気の商品は、なんといっても「厚堅焼き 中丸 無地」。パリッと心地よい噛み応えで、これぞ王道!といった味わいのおせんべいです。とはいえ昔ほど硬いものは好まれない傾向にあるようで、時代に合わせてほどよい硬さに。サクサクと噛むごとに、程よい醤油の風味が口の中に広がります。
左から厚堅焼き 中丸 無地 ごま中丸厚堅焼65円(税込) 唐辛子70円(税込)
厚堅焼きに続く人気商品が、「ごま中丸厚堅焼」。これでもか!というくらい、生地の中までぎっしりとゴマが練り込まれています。香ばしい醤油との相性も抜群!ぷちぷちとした食感が楽しめます。3番目の売れ筋商品が、四角い形が個性的な「唐辛子」。生地から唐辛子を練り込んであるため、間違えることのないようにと四角型に作られているそうです。一口かじると、唐辛子の粒々がお目見え。火を噴くほどの辛さではないものの、舌にピリピリとした余韻がしばらくの間残ります。
左から抹茶大丸 80円(税込) 白 砂糖煎餅 80円(税込) 焼き海苔 100円(税込)
鮮やかな抹茶色が美しい「抹茶大丸」。抹茶の香りとほんのりとした甘さが特徴で、お茶請けにぴったりの一品です。甘い物がお好きな方には、ほんのり優しい甘さの「白 砂糖煎餅」がおすすめ。真っ白な砂糖をコーティングしたおせんべいは、甘さとしょっぱさが絶妙なバランスです。「焼き海苔」は、真っ黒な見た目がインパクト大!片面に隙間なく張り付けられた海苔が香ばしく、パリっとした食感が楽しめます。口の中いっぱいに広がる海苔の香り。100円以下の商品が多い中、ちょっぴり贅沢気分が味わえるおせんべいです。
他にも、個性豊かなラインナップの揃う桜せんべいの陳列棚。まろやかなバターの風味とほどよい塩味が人気の「バター風さらだ」や、にんにく風味が癖になる「醤油にんにく」など、お子さんのおやつやビールのおつまみにもぴったりの商品が揃います。100円以下でおやつが買えるお店は今ではめずらしいもの。時にはお子さんがひとりでおせんべいを買いにくることもあるそうです。コンビニやスーパーでは見ることのできない昔ながらの風景。通常のお菓子より日持ちすることも嬉しいポイントです。
手間暇かけて焼き上げる、
こだわりのせんべい作り
店主は、三代続く生粋の荒川っ子。 お祖父様は荒川山谷通り(通称コツ通り)にて その昔、下駄屋さんを営んでいたそうです。
売り場の奥の扉をあけると、熱気の立ち込める作業場が。年季の入った焼き網やホイロが所せましと並びます。おせんべいを焼くのは店主ひとりのお仕事。ちょうど床には人ひとり分が入れる穴があいており、淵に腰掛けながら作業が行われています。最高で40度ほどにもなるという作業場内。夏場は作業の合間に水風呂で身体を冷やし、また焼き場に戻ることもあるのだそうですよ。網の上でこんがりときつね色に色づいていくおせんべい。焼きたてのおせんべいは、コメの味がダイレクトに伝わる素朴な味わいです。火加減の見極めも職人の大切なスキル。季節や湿度によっても焼き加減は異なります。近年では網を作っていた業者が製造をやめてしまったのだとか。壊れたら直してということを繰り返しながら、昔からあるものを大切に使っています。
焼き作業の前に、ホイロ(火炉)の熱で生地を暖め、水分を蒸発させるのも大切な工程。生地の水分量がせんべいの焼き上がりを決定します。機材のいたるところに似顔絵やイラストが描かれているのも微笑ましい光景。休日はスノーボードに勤しんだりと、チャレンジ精神旺盛な店主の遊び心が垣間見れる空間です。
店頭に展示されている、煎餅生地の型枠。 (現在は使用されていません。)
桜せんべいの原材料は、 安心・安全にこだわった国産のうるち米。 生地は信頼できる草加の業者から仕入れています。
桜せんべいで使用しているのはキッコーマンの濃口醤油。煮込んでさらに濃い味付けに仕上げます。焼きあがったせんべいを網の中に入れ、お醤油が入った容器の中でぐるぐると。遠心力を利用することで、全体的にまんべんなく味付けすることができるそうです。
過去に一度はせんべい屋のお仕事から離れたという現店主の秋元さん。紆余曲折を経てふたたび桜せんべいの屋号を守ることとなりました。子供の頃からお小遣いをかせぐために父親のせんべい作りを手伝っていたのだそう。焼き加減など細部にこだわる様子には、せんべいに対する深い愛情があふれています。
昔はたくさん買ってくれた常連さんも今では高齢となり、硬いおせんべいも昔のように大量には買われなくなりました。とはいえ、昔ながらのお客さんや、年金暮らしの方を考えるとなかなか値上げはできないのだそう。多くのせんべい屋がコメ価格高騰にあえぐ中、1枚あたりの値上げ額をわずか5円に留めたことも涙ぐましい企業努力です。時には地域のお客さんの声を取り入れながら、下町ならではの悩みに苦笑しながらも、地域の人々に育てられた数々の思い出話を語ります。
サクラサク!春のギフトに最適
御祝やお年賀など、大小さまざまな熨斗を扱う桜せんべい。桜のマークが入ったおめでたいパッケージのおせんべいは、入学祝いや春先の贈り物としてもぴったりです。店舗で焼き上げたせんべいの他にも、桜せんべいでは袋詰めのおかきやあられなどのお得な商品も多数販売。ホームページ上ではネット購入も可能です。店頭にはベンチ席が設けられているため、購入したおせんべいをその場で食べることもできますよ!1枚から購入することができるので、その場で味見をして気に入ったものをたくさん購入するのも良いですね。
桜のパッケージに包まれた桜せんべいは、これから来る花見シーズンのお供にもぴったり!昔懐かしい桜せんべいを片手に、心地よい春のひとときを楽しんでみてはいかがでしょうか。
有限会社 桜煎餅
営業時間:10:00~17:00 ※金曜日は18:00まで営業
休業日:火水 ※悪天候の際は臨時休業となる場合があります。
TEL:03-3807-2803
住所:東京都荒川区南千住2-1-3
ホームページ:https://www.teyaki.co.jp/
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