「荒川区」というと、昔ながらの下町情緒溢れるお店や街並みのイメージが大きいのではないでしょうか。実を言うと荒川区は今、時代にフィットしたまちづくりや、暮らしを豊かにしてくれるお店やスポットがたくさんある注目のエリアなんです。
ひっそりとした住宅街に突如現れるオシャレなお店。広々とした魅力溢れる公園、リノベーションで新しく息を吹き込まれたような素敵なスポットなど、モノづくりの街・荒川区を支える「暮らしに寄りそうスポット」を探訪してご紹介していくコーナー、それが「荒川くらし探訪」です。
今回の「荒川くらし探訪」は、区内の各銭湯で開催される荒川銭湯スタンプラリー2024 AUTUMN「デビュー銭(せん)」のご紹介。
これまで行って見たいけどなかなか行く機会のなかった銭湯デビューのきっかけになればと思います。
銭湯初心者から常連まで楽しめるこの銭湯スタンプラリーを通じて、古き良き銭湯や意外とモダンな銭湯を巡って、下町銭湯文化の魅力を再発見してみてください。
このたびは「デビュー銭(せん)」第一弾の企画として、「齋藤湯」の店主である斎藤勝輝さんと梅の湯の店主である栗田尚史さんとのインタビュー対談を行いました。会場となったのは小台銀座商店街に位置する「梅の湯」。この日は休業日とあって、清掃を終えたばかりの床がピカピカと輝いていました。
(写真左)齋藤湯 斎藤勝輝さん (写真右)梅の湯 栗田尚史さん
齋藤湯の店主を務める斉藤さんは、公衆浴場の活性化を目的とする「東京都公衆浴場業生活衛生同業組合」の荒川支部総務。梅の湯の店主である栗田さんは、同組合の荒川支部長を務めます。普段からも面識のあるおふたり。終始和やかなムードの中、対談が行われました。
ー本日は、お忙しい中インタビュー取材にご協力いただきありがとうございます。おふたりは同じ組合に所属しているということで普段から交流があるんですよね?
栗田さん:はい。斎藤湯さんにも実際に入りに行かせてもらったり。色々と勉強させてもらってます。
斉藤さん:栗田さんは若いんだけどね、しっかりとやることを忠実に進めていくという強さがある。栗田さんが入ってくれたことによってだいぶ組合も活性化したよ。
ー齋藤湯さんも、梅の湯さんも様々なイベントで集客を図っているようですが。
斉藤さん:今ではお客さんも若い人たちが増えている。アルバイトさんや、若い人たちのセンスをどんどん取り入れていくのがベストなやり方だと思いますね。過去にはレディースデーとして男湯も女湯も全部開放して。露天風呂にキャンドルを設置したり浴槽にバラを浮かべたりっていうイベントを開催した。それがだいぶ好評で、時間帯によってはロッカーが足りなくなっちゃうこともあったんだよ。
栗田さん:日替わりのイベント風呂はもちろん、ヨガなどの多彩なイベントを開催しています。もともと音楽イベントなどに出かけることが多いので、そういったところからインスピレーションを得たりもしています。
ー齋藤湯さんはホームページ上で英語での紹介動画も公開されていますね。外国人観光客の利用者も多いのでしょうか。
斉藤さん:成田からのアクセスが良い日暮里という土地柄、外国人観光客がとにかく多い。すぐ隣にも民泊があるし、時間帯によっては外国人の方が多いことも。
ーちょっとした異文化コミュニケーションが楽しめますね。しかしながら言葉の面などで大変さを感じることもあるのではないでしょうか。
斉藤さん:そうゆう部分もあるにはあるけど、今は日本人よりもマナーがきちんとしている人が多い。昔はパンツ入ったままとかサンダル履いたままで入ってきちゃう人なんかもいたんだけどね(笑)。
栗田さん:今はルールブックなどもあるから、きちんと事前に勉強してきている人も多いんですよ。
斉藤さん:銭湯という習慣のない外国人の方々にも、ぜひ日本人が誇る入浴マナーを学んで、自国に持ち帰って欲しいですね。
ー創業してから齋藤湯さんが約90年、梅の湯さんが約70年。大規模なリニューアルを経ていると思うのですが、そのことをきっかけに変わったことなどはありますか?
斉藤さん:うちのリニューアルが確か2015年で。
栗田さん:うちがその次の年の2016年。
斉藤さん&栗田さん:2年続けて荒川の銭湯がリニューアルしたんだよね。
斉藤さん:リニューアルを機に、家族連れがたくさん来るようになった。年代によって適温も異なるから、子供から大人まで誰もが楽しめるお風呂を作らなくてはと思ったね。やはり来てくれるみなさんに喜んでもらうのが一番。熱い湯が苦手なお子さんから昔ながらの熱湯が好きな大人まで。みんなが楽しめるお風呂を目指そうと思ったんだ。
栗田さん:昔の銭湯は熱い湯が当たり前でしたけどね。
斉藤さん:昔は雑菌が繁殖してしまうことを防ぐためにも、温度を高くする必要があった。保健所によって義務付けられていたこともあったし。
栗田さん:人間が気持ち良いと考えられる温度が一番雑菌も増える。だから高温にすることで対処するしかなかったんですよね。今は設備も進化したから、ろ過機なんかでも殺菌できる。熱い湯にこだわる必要もなくなったんです。
自身も毎日銭湯に浸かり湯加減のチェックを怠らない。利用者目線を忘れない、お風呂屋スピリッツに溢れた斉藤さん。
ー8月から値上がりが決定した都内の公衆浴場ですが、条例によって入浴料金の上限が定められていると聞きました。設備投資にも莫大な費用が掛かると思われます。ご苦労されることもあるのではないのでしょうか。
斉藤さん:1人当たりは500円ちょっとでも、家族全員で来ると合計で2000円とかになっちゃうんだよね。それだけの金額があれば、他の使い道もあるわけで。申し訳ない気がすることもある。
栗田さん:今は、どの家にもお風呂があるから、親御さんでも銭湯がはじめてだという人がいますね。“生活の一部”だった場所から『特別な場所』という位置づけに変化している。人によって、高いとも安いとも感じる価格帯といったところでしょうか…
銭湯界における新旧の架け橋を担う、若きエース。夜勤明けでお疲れにもかかわらず、笑顔でインタビュー対談に応じてくださいました。
ー今後、銭湯スタンプラリーなどを通じて新たな利用者が増えることを期待しています。はじめて銭湯を訪れる方々へ伝えたいことはありますか?
栗田さん:何かをきっかけに銭湯に足を運んでもらって。もしかしたらその人にとっては、就職や進学で上京してきた新しい土地なのかもしれない。でもそこには昔からの常連さんなんかもいるわけで、中にはルールに厳しい人もいたりする。最初の1回目は小言を言われたりなんてこともひょっとしたらあるかもしれないけど…心折れることなく、また来てもらいたいと思いますね。銭湯ってその土地その土地の雰囲気がすごくよく出る場所だと思うんです。肌でそれを感じて、新しい土地に馴染んでいくきっかけにしてもらえたらといいなと思っています。
お年寄りから子どもまで。昔からこの地に住む人から新たにこの地を訪れる人まで。
おふたりの会話からは「全ての人に気持ちよくお風呂を楽しんでもらいたい」という熱い想いが伝わってきました。
荒川銭湯スタンプラリー2024 AUTUMN 「デビュー銭」
開催期間:2024年10月1日(火)~2024年11月30日(土)
参加方法・詳細は荒川銭湯スタンプラリー特設サイトをご覧ください
特設サイト:https://arakawa.news/stamprally/
問い合わせ:荒川銭湯スタンプラリー事務局(arakawa.sento@gmail.com)