外国人、子育て世代、高齢者・・・からの大豆?
取材に応じてくださったのは、子育て交流サロン「ilona(いろーな)おやこの縁側」を運営する白井美典さんと、介護の相談や支援などを行う「フクシのなべさん」の渡邉秀雄さん。このお二人とその仲間達が手を組んで始めたのが、「下町荒川おひさま根っこワーク」。日本古来の大豆を育て、味噌づくりを通して地域の人々をつなぐプロジェクトです。この時点で、「子育て交流サロンと介護?日本古来の大豆に味噌づくり?」と若干情報過多状態ぎみの取材スタッフでしたが、取材が終わるころには、全ては「助け合える社会を作りたい」という一貫した想いが流れているプロジェクトだと感動を覚えました。
白井さんの歩み:「大丈夫?」と声をかけられる場所を作りたい
白井さんは美大出身。キッズアートスクールの講師として経験を積み、自身が親になったことをきっかけに「言葉の壁を越えて交流できる場所」を作りたいと考え、様々な国籍の親子が集まる「多言語パーク」を2015年に立ち上げました。その後2019年に、主に0~3歳の親子や、プレママプレパパを中心に交流を深める場の「子育て交流サロンilona(いろーな)おやこの縁側」をオープン。現在白井さんは「多言語パーク」の運営からは離れていますが、メンバーたちはilonaを拠点に交流を続けています。
街のキーマンと繋がることで、災害などの緊急時にも 連携が取れることを知ってほしい、と話す白井さん
渡邉さんの挑戦:介護と地域をつなぎたい
一方、渡邉さんは介護業界で高齢者支援に尽力。特別養護老人ホームの施設長時代、地域住民にその存在が知られていない現実にショックを受け、コミュニティづくりに力を入れるように。地域をスタンプラリーでつなぐ「下町 花・フェス」に参加し、地域の人々との交流を深めるも、コロナ禍で施設に人を呼べなくなり、SNSを活用して情報発信を開始。1日10店舗以上を回って花フェス参加店を紹介するなどの地道な情報発信を続けた結果、地域コミュニティ界隈ではちょっとした有名人に!白井さんも「なんだかすごい勢いで投稿している人がいる…!」と出会う前から密かに認識していたのだとか。
誰もが安心して年を重ねていけるように 繋がることの大切さを話す渡邉さん
「いろんな分野の人をつなぎたい」という共通の想い・・・からの大豆!
白井さんと渡邉さんが出会ったのは、花フェスを通じてのこと。お互いに「地域のために何かしたい」という想いが共通していたことから、自然と交流が始まったそうです。
さて、前置きが長くなりましたが、ここからはいよいよ大豆の話。それぞれ異なるコミュニティを広げていたお二人ですが、その二つのコミュニティが交わることで、これまで関わりのなかった人たちの視点が加わり、課題が新たな角度から解決されることに気づいたといいます。「関係者だけで悩んでも、課題はなかなか解決しないことがある」――異なる分野の人々を繋ぐにはどうしたら良いのか、そんな視点から「大豆プロジェクト」が生まれます。
地域の人たちが育てた無農薬化学肥料なしの在来種の大豆 今では区内で1000人以上もの方が育てているそう
「荒川下町おひさま根っこワーク」とは?
在来種の保全、食育、そして繋がりの創造
プロジェクトの主役が大豆になったのは、栃木でナチュラルフード「森の扉」を運営するのりさんとの出会いが始まりでした。のりさんが手がける「竹のえんむすび」は、竹のプランターで大豆を育てる方法を地域の人々に伝え、在来種の大豆を未来へ繋ぐ活動です。この取り組みには、竹藪の保全のための「里山循環」の視点も取り入れられています。そんなのりさんが、「いろんな分野の人を繋げたいなら、収穫した大豆を一か所に集めて、みんなで味噌を作り、その味噌をまたみんなで食べる会を開いたらいいよ」とアドバイスをくれたことが、「荒川下町おひさま根っこワーク(おひ根っこ)」を始めるきっかけとなりました。在来種の大豆を守りながら、食育の要素を取り入れ、誰でも自由に参加できる――大豆を通して人々が繋がり合う場は、まさに目指していたことでした。
集めた大豆を「下町荒川みんなの味噌」として商品化。 まだ少量ですが、既に学校の給食やお店のメニューに 使ってもらっているそうです。
つなぐ大豆の参加方法
「荒川下町おひさま根っこワーク」は令和4年度荒川区環境区民大賞を受賞し、現在、都内に13か所の大豆配布・回収拠点を持つまでに成長しました。プロジェクトの参加方法はシンプル。趣旨に賛同する方であれば、どなたでも指定の日に拠点を訪れて大豆を受け取ることができます。唯一のルールは「農薬・化学肥料を使わずに育てること」。参加者は育てた大豆の成長記録をFacebookグループに投稿して楽しんだり、在来種の枝豆や大豆を味わったりと、自由にプロジェクトに関わることができます。また、拠点に設置されたBOXに寄付をしたり、収穫した大豆を拠点に寄付することで活動を支援することも可能です。(拠点の詳細は下記連絡先よりお問い合わせください)
味噌ラーメンも!?広がる「おひ根っこ」の夢
大豆を植えた農地の利用率を向上させるため育てられた古代小麦
そして、夢はどんどん広がります。「荒川だけ自給率100%にしちゃおう!」という大胆でワクワクする目標を掲げ、さらに二毛作で古代小麦も育て始めました。古代小麦は観賞用として販売され、新たなネットワークが広がっています。
「いつかこの小麦で麺を作り、味噌ラーメンを提供できたら面白いね」と夢は膨らむばかり。ただし、古代小麦は麺づくりにはあまり向いていないようですが……それでも、挑戦は続きます。
2/1(土)開催!味噌の仕込み体験&味噌料理パーティ
さて、冒頭でお伝えしたイベントについてです!荒川産100%の大豆を使った手作り味噌の仕込み体験や、去年仕込んだ味噌を使った料理を楽しむことができます。今年は玄米麹と白米麹を使った2種類の味噌作りが体験できるそうです。予約制ですので、参加をご希望の方は下記までお気軽にご連絡ください!
ワイワイガヤガヤ 味噌の仕込み体験&味噌料理パーティ
時間: 14:00~20:00
場所: 尾久のはらっぱ(バリアフリー多世代共生施設)
〒116-0001 東京都荒川区町屋5-10-9
参加費: 大人800円/小学生600円/幼児無料
内容:
・荒川産大豆100%を使った手作り味噌の仕込み体験(味噌の持ち帰りはありません)
・去年仕込んだ味噌で味噌料理を楽しむ交流会(16:00頃から)
・大豆を育てていない方も参加OK
・下町荒川みんなの味噌(マルカワみそ製造)の販売もあり
※遅刻・早退応相談、16:00以降は出入り自由
※予約制:参加希望の方は下記連絡先へ
フクシのなべさん
住所:東京都荒川区町屋4-23-7
EMAIL:info@fukushinonabesan.com
HP: https://www.fukushinonabesan.com
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