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【荒川区東尾久】荒川ギャラリー探訪:下町の風情とアートが交差する「OGU MAG+」

荒川区は、下町情緒とともに、ふとした瞬間にアートの息吹を感じられる街。思わず足を止めたくなるような、温かみとひらめきに満ちた空間が散在しています。「荒川ギャラリー探訪」では、どこか懐かしくも新しい感覚を呼び覚ます、荒川区ならではの展示空間に焦点を当ててご紹介していきます!

JR田端駅から徒歩11分、荒川区東尾久の下町風情あふれるエリアに佇むギャラリー「OGU MAG+(オグマグ)」。ここはアートを鑑賞するだけでなく、カフェでくつろいだり、人との交流を楽しんだり、多様な過ごし方ができる場所として地域の人たちに親しまれています。

2010年にギャラリースペース「OGU MAG」としてオープンし、2021年のリノベーションを経て、カフェやシェアハウスを併設した「OGU MAG+」となりました。今回は、オーナーの齊藤英子(さいとう ひでこ)さんにお話を伺い、OGU MAG+の魅力を探ってきました!

スクリーンからギャラリーへ

さまざまな世界をつなぐ「下町の交差点」

齊藤さんは、幼少期をサウジアラビアやシンガポールで過ごし、学生時代にはアメリカやイギリスで生活するなど、多様なバックグラウンドをお持ちの方。

ギャラリーを開く前は映画業界に携わり、配給や映画制作、国際映画祭のサポートなどを行っていたそうです。15年前にフリーランスの映画コーディネーターに転身し、そのタイミングでギャラリーを始めることになります。

映画制作に関わる中で、作品や演出がどのように受け入れられるのか、観客がどんな反応を示すのかに常に関心を寄せていたという齊藤さん。その視点はギャラリー運営にも生かされています。

作家が生み出した作品を、来場者の動線を考えながら、どのように展示し空間を作るか――見せ方ひとつで作品の印象や売れ行きが大きく変わる中、作品が世に出る瞬間を作家とともに分かち合えることに、大きな喜びとやりがいを感じているそうです。

作家と交流できる場所

ギャラリースペースでは、現代アート、写真、絵画、立体、工芸など、さまざまなジャンルの展示やワークショップが開催されています。取材時には、荒川区西尾久に革靴・革製小物の工房を構える「shiro」の展示受注会「しろとりどり」が開催されていました。



まるでこちらを見つめ返しているかのように
整然と並ぶ革靴や皮サンダル。美しさに圧倒されました!

手間暇かけて作られたハンドメイドシューズの数々。何色が出るかわからないガチャガチャで取り出せるキーホルダーや、名入れ体験、製造過程がわかるような展示など、来場者が楽しめる工夫がいたるところに見られました!


shiroの「未来に残せるAnniversary shoes」は
令和6年度ara!kawa認定商品に選ばれています。

展示期間中は、作家が可能な限り常駐することを大切にしているOGU MAG+。来場者が作家に直接質問したり、作家自身が作品を説明したりすることで、新たなプラス(+)が生まれます。

ある写真展では、ふらりと立ち寄った来場者が、作品の中に写る男性を見て「遠方に住む父の後ろ姿に似ている」と涙を流したそうです。作家の意図を超えて、作品が思いがけない感情を引き出す瞬間は少なくありません。そうした場面を作家と共有することで、展示は一方通行ではなく、深い交流の場へと広がっていきます。

一人で作品をじっくり鑑賞するもよし、作家と交流するもよし。自分に合ったスタイルで気軽に足を運んでほしいと齊藤さんは語ります。

地域住民とともに作られたギャラリー

OGU MAG+の建物は、齊藤さんの親御さんが所有する築60年の物件。老朽化に伴い建て直しの話も出ていましたが、建物への愛着から2020年にリノベーションを決意したそうです。
ワークショップを通じて地域の人々の協力のもと、地域の建築家による改修が進められました。


ワークショップの様子

1階にカフェを新設するというアイディア自体も、ワークショップで地域の人々との話し合いから生まれたもの。齊藤さんの旦那さんが荒川区で焼き菓子工房を営んでいたことから、「焼き菓子を置いてみては?」という考えに至ったのだとか。展示を鑑賞しながら焼き菓子や飲み物を楽しめる空間となり、訪れる人の層も広がりました。


カフェスペース

齊藤さんの旦那さんが経営する
「焼菓子工房アトリエエヌ」の焼き菓子

カフェで使用するコーヒー豆、食器、グリーン、家具などのほとんど全てが、荒川区の事業者や齊藤さんのお友達やお付き合いのある作家さんから仕入れたもの。内装もワークショップを通して地域住民が手がけていますから、文字通り「荒川区民によって作られた場所」ですね!


荒川区西尾久にある株式会社アプロスのランプ。
荒川探訪でも以前ご紹介させていただきました!

ギフトボックスののしは画家・吉國元さんの絵で、
花器は陶芸家・本田伸明さんによるもの。OGU MAG+で
お付き合いのある作家さんたちです。ドライフラワーは
近隣の花屋さんから生花で購入したものをドライにしたそう。

いちじくのスコーン(左)¥450(税込)、タルトフロマージュ(右)¥550(税込)
どちらも絶品でした!カップとお皿(左)は、齊藤さんの
お友達が関わっている沖縄の民芸のセレクトショップ
「ふくら舎」のもので、お皿(右)は花器と同じ
陶芸家・本田伸明さんの作品だそうです。

「アフリカ」を通して知った「荒川区」

齊藤さんが荒川のことを深く知ることになったのは、意外にも“アフリカ”がきっかけでした。映画制作会社に勤めていた頃は、荒川区への愛着はそれほどなかったものの、会社と職場の往復だけの生活をやめ、ギャラリーを始めたことで地域への関心が芽生えたといいます。
幼少期をサウジアラビアで過ごした齊藤さんは、ケニアやエジプトなど北アフリカにも訪れた経験がありました。そんな折、当時近所に住んでいた現代美術家の西尾美也さんがアフリカに繋がりを持っていたことから意気投合。2010年、ともに「アラカワ・アフリカ」という現代アートを通じて荒川区とアフリカをつなぐプロジェクトをスタートさせました。


2011年「アラカワ・アフリカ」展示の様子

プロジェクトを始めるにあたり、「アフリカだけでなく、荒川のことも知らなければ」と思い、地域について調べることに。すると、アフリカの布をコレクションし販売する工房「アフリカ屋」、アフリカの太鼓・ジャンベの工房「東京ジェンベファクトリー」など、荒川区にはアフリカに関連する活動をしている人々が数多く存在していることを知りました。

こうした出会いを通じて地域のことを深く考えるようになり、また、たくさんの素敵な人たちが案外近くに住んでいるということにも気づいたそうです。

その一人が、荒川区在住の写真家・小泉定弘さんです。小泉さんは日本大学で多くの写真家を育ててきた写真家で、荒川区の街並みを撮り続けてきた方でもあります。


小泉定弘さんの写真集「都電荒川線」(上)
「わがまち下町荒川」(下)

齊藤さんは、小泉さんから尾久の歴史や文化についてお話を聞く機会を得るようになり、2021年3月には、リノベーション後初の展示として小泉さんの尾久の商店街を撮影した写真展を開催。尾久についてこれまで小泉さんから伺った内容は、いつかまとめたいと話してくれました。

下町ならではの寛容さとモノづくりへの親しみ

荒川区はもともとモノづくりの街であることからか、アート作品などの「手仕事」に親しみを持つ人が多いと齊藤さんは感じています。「ギャラリーというと敷居が高く感じられるかもしれませんが、思い切って入ってきてくれる方も多いです。かつて職人として活躍した人々が『俺もこんなのを作っていたんだ』と作品を持参してくることもあります」と齊藤さん。
また、下町ならではの寛容さも感じるといいます。レセプションで音楽を流したり、イベントで外に人だかりができたりしても、近隣の人たちは温かく見守ってくれたそうです。

ふらっと立ち寄れる、サードプレイスのような場所

「どういう人に訪れてほしいですか?」という質問に対し、「こういう場所になれば良いなと思ってワクワクしながら作ってみてるけど、来る人にとってはまた違う形になるんですよね」と齊藤さん。
最近では、「サードプレイス的な存在になってきている」と言われるそうです。サードプレイス(第三の場所)とは、自宅や職場・学校とは別に存在する「居場所」のことです。


ここでは「チクマグ~針と糸、あるいはおしゃべり~」という縫い物を楽しむイベントも定期開催されており、それはまさにそのような場所になっているそうです。

アート、コーヒー、焼き菓子、裁縫——それらは目的であると同時に、訪れた人々が気持ちを落ち着かせ、安心感や開放感を得るためのツールなのかもしれません。齊藤さんは「ただコーヒーを飲むだけではない、心をほどく場所が大切。そういう場があればいいなと思っています」と語ります。

さまざまな人が行き交い、異なる世界が交差する空間、OGU MAG+。ここは以前ご紹介した「下町荒川おひさま根っこワーク」の大豆配布・回収拠点で、集めた大豆で味噌づくりのイベントを開催する拠点でもあります。地域の魅力を再発見し、新たな出会いを探しに、ぜひ足を運んでみてください!

OGU MAG+
住所:
東京都荒川区東尾久4-24-7
TEL:03-3893-0868
EMAIL:info@ogumag.com
HP:https://www.ogumag.com/index.html
Instagram:https://www.instagram.com/ogu_mag/

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