荒川区のすぐれた技術、製品を内外に力強くアピールするために誕生した「ara!kawa」。「あら、かわってる。あら、かわいい。」をコンセプトに、荒川区でのモノづくりを応援するブランドです。このたびの荒川探訪では、令和6年度「ara!kawa」認定商品に選ばれた「Camel Clover(キャメルクローバー)」をご紹介。販売元である株式会社キャメル鉛筆製作所のオフィスを訪問し、製品や荒川区でのモノづくりに関する想いを伺ってきました。
昭和14年創業!
三代続く鉛筆工場
株式会社キャメル鉛筆製作所が本社を構えるのは、京成電鉄・東京地下鉄町屋駅から徒歩10分ほどの住宅街の中。ラクダのイラストがあしらわれた看板がオフィスの目印です。昭和14年3月に初代代表の加藤琴一氏が鉛筆加工業を開始したのがはじまり。それから10年後の昭和24年に「合資会社琴線鉛筆製作所」として法人化しました。2年後には足立区梅田に第二工場を新設。およそ80年もの間、すぐれたえんぴつを作り続ける老舗の鉛筆工場です。
昭和26年に組織名を変更して誕生した「株式会社 キャメル鉛筆製作所」。今回インタビューに応じてくださったのは、三代目代表を務める加藤栄一さんです。社名に関しては、戦後の日本において洋もく(外国製のタバコ)が人々の憧れとなっていた時代背景が由来となっているのではないかと推察。長年にわたりえんぴつを作り続け、現在ではOEM製品を中心とした学童用の筆記具をはじめ子どもからお年寄りまで楽しく使ってもらえるような筆記具を開発していくことを目指しています。
美しいデザインと持ちやすさが魅力
12色の色えんぴつが入ったキャメルクローバー。 通常のえんぴつとサイズが異なるため、 専用の二穴式シャープナーも付属品です。
キャメル鉛筆が開発したクローバー型の色えんぴつ「Camel Clover(キャメルクローバー)」は、熟練の鉛筆製造技術をもって生み出されたユニークな商品。3つの溝が指に自然とフィットすることで、正しいえんぴつの持ち方を促してくれるという優れものです。長時間えんぴつを使用する職業の方にはもちろん、指先に力が入りにくいお子様やご高齢の方にも。先日行われた東京TASKものづくりアワード2024では同商品が大賞を受賞し、ギフトショーに出展することでさらなる注目を集めました。
指に自然にフィットし、長時間握っていても疲れないことがキャメルクローバー最大の特長。えんぴつに取り付ける矯正器具なるものも存在しますが、付ける位置をその都度調整する必要があるというのが難点です。比べてキャメルクローバーは最初から溝が付いているため、どこを握っても正しい持ち方になることが期待されるというもの。授業中や作業中に転がって落ちてしまうといったことも防げます。
コンパクトな二つ折りのパッケージは、持ち運びにも最適。寒色系と暖色系で分かれており、使いたい色のみをサッと取り出すことができます。使うたびに本を開く時のようなわくわくした気持ちに。バッグの中に忍ばせて、いつでもどこでもスケッチやお絵描きが楽しめます。えんぴつ本体に使われているのは、軽く加工のしやすい「インセンスシダー(ヒノキ科)」。ロッキー山脈でしか採ることができないといわれる優れた木材です。木肌が美しく上品な質感を実現。えんぴつの材料として伐採された後はインドネシアや中国などで加工され、板状になってから日本に運ばれてきます。
カラフルな塗装がえんぴつの上面のみとなっているのは、使う人に上質な木の触り心地を感じてほしいから。握る部分には透明のラッカー加工のみが施されています。塗料を付ける頭付けの作業は、加工会社に依頼。現在では子どもが口に入れることを想定し、一般的な鉛筆の塗料は重金属などの有害物質を使用しないという取り決めとなっているそうです。色とりどりに色付けされたキャメルクローバーの頭部分。並べるとより一層かわいらしく、見た目も楽しめる商品となっています。
理想のえんぴつができるまで
通常の鉛筆を製造している様子。 機械で溝をつけた木の板に、芯を入れていきます。
キャメルクローバーが製造されているのは、町屋の本社から車で10分ほどの場所にある梅田工場。現在は4名のスタッフが作業に当たっています。大きな工場ではない分、他の会社が作らないようなものを作りたい。これまでにもユニークな商品を多岐にわたって製造してきました。
三角型のえんぴつが持ち方の改善に有効的であるということは前々から認識していたのだそう。社長のお孫さんが細い指でえんぴつを持ちにくそうにしていたことをきっかけに、さらなる改良を重ねることで完成したのが現在のキャメルクローバーです。
板状の鉛筆を表、裏と削ることで手前にあるような 1本1本バラバラのえんぴつが出来上がります。
溝をつけた同じ厚さの二枚の板を重ね、芯を挟むのが通常の鉛筆製造。上の面を削った後は裏返して同様に削ることで1本1本がバラバラに切り離されます。
一方、キャメルクローバーは3つの溝がついたクローバー型。上下の板を同様に削ったのでは完成し得ません。通常の機械では一方向にしか削ることができないため上下異なる型(カンナ)が必要。また半分で割り切ることができない形であるため、合わせる二枚の板の厚みを変える必要がありました。
鉛筆削りで削ることができるようにするためにも、芯は中心に位置している必要がある。緻密な計算を繰り返すことで理想とする割合にたどり着きました。上下異なる削り型を作成するにはそれを固定するための定板(じょうばん)も必要。1本のえんぴつを完成させるために、さまざまな試行錯誤があったのだと教えてくださいました。
優れた技術を誇る!
荒川区の地場産業
その昔、木工材が木場(深川)から隅田川を通って入ってきていた荒川区。家具屋をはじめ、地の利を活かした木工産業が盛んに行われていました。ドイツから入ってきた技術を真似る形で、独自の進化を遂げていった日本の鉛筆製造業。戦後の最盛期には現在の町屋周辺にも多くの工場が存在していたそうです。
鉛筆産業はいわば荒川区の地場産業。古くから受け継がれる技術を守りながら、最高品質のえんぴつを作り続けます。優れた技術を用いて誕生した自社製品のキャメルクローバー。荒川探訪商店でも近日発売を予定しています。
スマートフォンやタブレットの普及により、教育現場や日常生活においてもえんぴつを使用する機会が減ってきてしまっている今日この頃。一方で、書くことがもたらす脳や精神的な効果にも関心が寄せられています。キャメル鉛筆では色えんぴつのみならず墨芯の製品も販売予定とのことで、デザイナーやクリエイターなど書くことをお仕事にしている方はぜひチェックしてみてください!
書くことの楽しさを思い出すきっかけに。キャメルクローバーの素晴らしさを、ぜひお手に取って体感してみてくださいね!
株式会社キャメル鉛筆製作所
住所:東京都荒川区町屋3-19-20
電話番号:03-3895-5933
ホームページ:http://www.camel-pencil.co.jp
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