荒川区のすぐれた技術、製品を内外に力強くアピールするために誕生した「ara!kawa」。「あら、かわってる。あら、かわいい。」をコンセプトに、荒川区でのモノづくりを応援するブランドです。このたびの荒川探訪では、令和5年度「ara!kawa」認定商品に選ばれた「BOOK NOTE」と、令和4年度に選ばれた「えぽっけ」を前編・後編に分けてご紹介。製造・販売元である渡邉製本株式会社のオフィスを訪問し、製品や荒川区でのモノづくりに関する想いを伺ってきました。
創業から約80年!
渡邉製本の強みとは
長閑な住宅街の中に位置する渡邉製本株式会社。 周辺には町工場が点在し、 目の前をフォークリフトが行き交っています。
この度、荒川探訪でご紹介するのはJR三河島駅から徒歩10分ほどの住宅街に位置する「渡邉製本株式会社」。辞典や写真集などの“上製本”に教科書や実用書などの“並製本”、両方を自社内で加工できる荒川区唯一の製本会社です。
優れた製本を提供する “製本のコンサルタント”。創業以来約80年もの間、多岐にわたる製本の委託加工を手がけてきました。2016年以降はノートを中心とした自社製品の製造・販売を開始。国内外に優れた商品を送り出しています。1946年、初代社長の渡邉由吉氏によって台東区で創業した渡邉製本株式会社。まだ製本会社の少なかった時代に、出版社の出資を受ける形でスタートを切りました。1986年には、工場拡大のため荒川区に移転。2008年には現社長である渡邉浩一氏が3代目として就任しました。
荒川の地を選んだのは、より広い土地が確保できることと顧客の多いエリアからのアクセスが良いことが決め手。印刷関連産業が地場産業である荒川区は助成金などの制度も手厚く、モノづくりをする上では非常に優れた環境にあるそうです。
世界規模で考えると印刷技術はドイツが最高峰、本の修復はイタリアの得意分野だといわれています。それぞれ国によっての強みは異なりますが、日本の自慢はなんといっても優れた紙の品質。万年筆との相性や書き味が良いものも多く、世界的に評価を得ています。そんな上質の紙をまとめる製本技術を有することも日本の強み。薄くて軽い日本産の紙を扱える製本会社が海外には少ないことから、米国の会社から相談が来ることもあったそうですよ。
最高品質の紙には最高レベルの製本技術を。他の国には決して真似することのできないメイドインジャパンの付加価値が、渡邉製本の誇りです。
技術を生かして自社だけの製品を!
巧みな製本技術を持つ渡邉製本株式会社。2016年からは、自社開発によるオリジナル商品の販売を開始しました。「BOOK NOTE」は、製本職人が刷毛で仕上げたこだわりのノートブック。創業約80年の製本会社がこれまでの経験を活かし、使いやすさを追求した製品を作りました。
商品のネーミングは、よりシンプルでわかりやすいものをといった想いから。製本会社の誇りをかけて “BOOK” のワードを取り入れました。奇をてらったデザインや外国人ウケを狙った和柄などは取り入れずに、シンプルで良いものを。丈夫さと開きの良さの秘密は、古くから伝わる“糸かがり綴じ”です。10世紀以上も前から続くという伝統の製本方法。職人が一冊ずつ刷毛による作業で丁寧に仕上げています。
伝統的な糸かがり綴じ。 開いてもページが抜け落ちることなく、 高い強度を保てます。
手でおさえなくても180°開いた状態をキープできるということが、BOOK NOTE最大の魅力。背中合わせに360°折り返せば、立ったままでも使用できます。特殊な製本方法を用いているためアイデアのアウトプットやスケッチにも最適。リネンの表紙も心地よく手に馴染み、経年による色合いの変化も楽しめます。
使用しているのは、インクがほどよく馴染む国産の “OKフールス紙”。万年筆との相性も抜群で、書く時に心地よい感触を味わえます。好みに応じて使えるようにと、方眼と無地の2種類を用意。印刷して使える便利な罫線下敷きも、ホームページからダウンロードできますよ!(➤下敷き用罫線)
フルフラット構造のBOOK NOTE。 手でおさえなくても180°開いた状態をキープできます。
用紙の角が丸くカットされていることもBOOK NOTEの大きな特徴。指先を切ってしまわぬように、端が折れてしまわぬように。ひとつひとつ手作業で角を落とす作業が行われています。手間のかかる作業ではありますが、使う人のことを考え抜いて作り上げた製品であるからこそ。渡邉製本の工場内では手間暇を惜しまぬ作業が、日夜行われています。
BOOK NOTEができるまで
30年以上の職歴を誇る熟練の職人さんも。 息の合った作業がもくもくと勧められています。
取材に訪れたのは、ちょうどBOOK NOTEの増産期。今回は特別に、商品を製造する作業中の様子を見学させていただくことができました。様々な機械の置かれた工場内で働くのは、およそ10名の職人さんたち。うち数名がひとつのテーブルに集まって、もくもくと作業を進めています。それぞれ持ち場は基本的に決まっているため、他の場所を担当することはあまりないのだそう。ひとつの作業への高い習熟度が伺えます。
1冊のBOOK NOTEが完成するまでには、紙を折りたたむ“折り”の作業に、折ったものを集めて1冊にする“丁合”。糸で綴じる “糸かがり綴じ” に、表紙のクロスに接着剤で台紙を貼る作業など。気の遠くなるような工程がテンポよく進められていきます。乾燥しやすい冬にはボンドに水を加えたりすることで微調整を。手作業を重んじていることが渡邉製本の昔から変わらぬポリシーです。
クロスを貼りつける作業には、 机の角や手持ちの文鎮を。 職人さんそれぞれの手に合ったものを 長年にわたって愛用しているそうです。
熟練の職人さんによる、手慣れた刷毛さばき。 優れた本を作り上げるために欠かせない、 大切な作業です。
工場内に設置された三方裁断機。 背以外の三辺が、大きな音をたてて 豪快に裁断されていきます。
大企業にはスピードやコストでの優位性がある分、機械ではできないことを。細かい作業を職人さんの手で行うことで、使い勝手のよい商品が誕生します。とはいえ、全部手作業にしてしまうとコストがどうしてもかさんでしまうもの。必要に応じて使い分けることが重要だと教えてくださいました。
BOOK NOTEはどこで手に入るの?
A5サイズ(210mm×148mm) ¥3,355 上から、ルージュレッド、フォレストグリーン デニムブルー、ウォームブラック。
写真左 B6サイズ(182mm×128mm) ¥3,135 フォレストグリーン、ウォームブラックの2色展開。
現在、全国の文具店や書店にて販売中のBOOK NOTE。荒川探訪商店でも、無地と5mm方眼併せて16種類のBOOK NOTEを販売しています。日本人にとって慣れ親しんだ大きさのB6サイズに加え、2018年にはユーザーからの要望を受ける形で一回り大きいA5サイズも登場!プレゼントの品としても最適です。
発売当初は売れ行きが伸び悩んでいたというBOOK NOTE。現在では直売会や国際的な展示会に数多く参加することで、海外の販路を広げています。ある時には国内で商品を手に取った訪日客が、渡航先や移住先から同じ商品を求めてくることも。取材に訪れた日は、ちょうどイタリアからのお問い合わせに対応していたところでした。
現在ではロンドン、パリ、シンガポールをはじめとした数々の国で販売中。お次は世界のどんな場所から注文がくるのか!?世界に羽ばたくBOOK NOTEの今後に期待が膨らみます。
書く喜びを届けたい!
自分だけの一冊を
現社長である渡邉浩一氏。 ユーザー、リピーターからの声が 大きな励みになると話してくださいました。
自社の製本技術を詰め込んで究極のノートを作りたいという思いから、何度も何度も試作を重ねて誕生したBOOK NOTE。はじめての自社製品であることからも、社員にとって強い思い入れのある製品です。格安で紙製品が手に入る一方、紙媒体が減りつつある昨今の世の中。ぜひ渡邉製本が誇る技術を肌で感じ、書くことを楽しんでいただきたいと話してくださいました。
日常の中で見聞きしたものや、美味しかったもの。トキメキをたくさん書き込んだ自分だけの本。完成する頃には、そっと本棚に並べたくなるような愛おしい存在になっているはず。BOOK NOTEは、幼い頃に誰しもが感じていた “書く喜び” を思い出させてくれる、そんな素敵な商品です。
現在、新聞や雑誌、ウェブマガジンなど様々な媒体から取材を受けている渡邉製本株式会社。高い製本技術と紙の知識を活かしてつくられた唯一無二の商品を、ぜひ一度お手に取ってみてくださいね!
渡邉製本株式会社
住所:東京都荒川区東日暮里3-4-2
電話番号:03-3802-8381
ホームページ:https://www.watanabeseihon.com/
Facebook:渡邉製本株式会社
Instagram:@booknotemania/
X:@booknote_tokyo
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